九 センスイとタイアタリ
ハナコ、コジロー、長老の三頭がデビルと戦うための特訓をしていると、二頭の若いオスのマッコウクジラが加勢を申し入れた。
一頭をセンスイといい、群れの中でも長時間深海に潜っていられる潜水の名人だった。もう一頭をタイアタリといい、若い割に身体が大きくガッシリしていて、敵に体当たりするのが得意だった。
二頭とも家族をデビルの餌食にされたり、シャチの群れに殺されたり、密漁捕鯨船の犠牲になったりして失っていた。そこで『離れマッコウ』となって遠くの海に行こうと思っていたところ、ハナコ達がデビルと戦うための特訓をしているという噂を耳にしてやってきたのだ。年齢はコジローと同じくらいだった。
「長老、僕達も仲間に入れてください」
「僕達、長老といっしょにデビルと戦いたいんです」
「僕達にも特訓をしてください」
センスイとタイアタリは口々に言った。
ハナコ達は大いに喜んだ。味方は多ければ多いほど助かるのだ。
「おお、センスイ、タイアタリ、お前達、来てくれたのか」
「ありがとう。いっしょに力を合わせて戦おう。僕達が力を合わせれば、デビルにだってきっと勝てるさ」
長老とコジローは喜んで二頭を迎え入れた。
「ふたりとも家族を亡くしたのね。わたしだけがひとりぼっちじゃないんだわ」
ハナコは改めてそう思い、絶対デビルに勝たなければと思った。