男性は、市の障害者施策推進部の職員で、この事業の担当者であったのだ。
舞ちゃんの絵を指さしながら「この絵、色の使い方が何とも言えない、透明感がありシャープなんですよね。見飽きない魅力があるんです」。
男性の言葉に、紗莉は驚きと喜びで胸が一杯になった。母も同じような気持ちになっているようだ。笑顔で舞ちゃんの顔を覗き込み、ぽんぽんとやさしく肩を叩いている。
紗莉は、「この絵は、娘の舞ちゃんが描いたんですよ」。驚く男性。
「素晴らしいですね。もっともっと描いて、観る者に感動を与えてもらいたいなあ」
紗莉は、雨の時と同じように、男性の言葉に勇気とやすらぎを感じるのであった。
■灯り始めた明かり
「赤いくつは~いてた……」
舞ちゃんは、今日も歌いながら、絵を描いている。最近は、黄色が加わった。親バカ、ばばバカかもしれないと思いつつ、紗莉と母は〈舞ちゃんの絵は世界一よね〉と顔を見合わせて、未来に明るい光が差すのを感じるのである。
療育園では、バザーを開催して、障害者のみなさんが手づくりした作品を販売している。舞ちゃんの絵がタオルになり、がま口になり、ストラップになり、小物入れになり、買って下さる人もいる。
紗莉は、舞ちゃんの「赤いくつは~いてた……」の歌に救われ、励まされ、母に支えてもらい、ここまで来られた。
「これからは、私が舞ちゃんと母を、守る番」
紗莉は、きりりとした表情で、未来を見据えるのであった。