「たとえ凄腕の記憶使いだとしてもここまで巨大な施設に術を掛け、自由に動かせはしない……。この建物は記憶を持った生物だな」
ラ・エンカの導き出した答えに、イムフラは笑いながら教えた。
「御察しの通りこれは生物だ。ワニの記憶を持った研究所で、いま私達は奴の腹の中……」
イムフラはワニに主の記憶を掛け、言う事を聞かせているらしく大きな振動が続いていた。どうやらワニが地面から這いずり出ている振動のようだった。ラ・エンカは、ミサイルを繰り返し発射しているがワニには全く効いていない様子だった。
皆が、ラ・エンカに注目している間、カイゼル達は、ラムカを救出していた。卵のような所からラムカを出し、鶏のフランゴと山羊のトラゴスはラムカの頭に付いているクラゲの装置を外していた。カイゼルは銃を構え頭巾を被った記憶使い達に向けると、彼らは直ぐに物陰に隠れ去って行った。
クラゲを外したがラムカは意識はなく、トラゴスが背負って立去ろうとすると、イムフラと目が合う三人。
「ワニに効かなくても、アンタには効くだろ?」
カイゼルが銃を向けるとイムフラは両手をゆっくり上げて、「降参だ!」とあっさりと言った。しかし、その直後、イムフラは小さな銀色の笛を咥え鳴らした。
その直後、上の階層の部屋から数匹のカーが這い出て、イムフラの笛の音を探し出すと物凄い速さでイムフラの前に現れた。トラゴスが部屋から出ようとすると、カー達が現れ、行く手を塞いだ。