第二章 ピカデリーホテル
三人でロンドンのスコットランドヤードへ向かった。入口で高垣が警棒を持って立っている警察官へ昨日の劇場事件の件でお話ししたいと伝えると直ぐ身分証明書の提示を求められた。三人が出して、確認すると三人を連れ中へ入った。
昨日の警察官の所へ連れて行かれ、三人を見た警察官は右眉を上げて、「何か?」という顔をして近づいて来た。
高垣は、昨日現場で会った警察官に会釈し隣の翔を紹介した。翔が事件の状況を話そうとすると翔の名前を思い出した警察官は手を上げて止め、近くの部屋の中へ招き入れた。
警察官が「昨日の方もご一緒で丁度良い。助かります」と言って「では早速ですが昨日の事件の話を出来るだけ順を追ってお話し頂けますか?」と、メモ帳を広げて聞いて来た。そこで高垣が要点を話し、翔はヘッドギアを取って耳の傷を見せ、もう一度ジャンプした時の状況を話した。
警察官は黙って聞いていたが、「王子グループの一行はどうしました?」と尋ねた。
「倒れていたので良く分かりませんが、多分ボディガードが直ぐ連れて出たと思います」
警察官は「ハンドガンを見た時恐怖は無かったのですか?」と聞いたが、翔は「そんな事を感じる前に身体が動いていました」と応えた。
警察官は襲った三人の背格好や他のテーブルに居たメンバーの顔を尋ねたが、翔はハンドガンを持っていた男の髭づらは印象に残っているが、ハンドガンの銃口が大きく見え、ジャンプしたので殆ど覚えていないと答えた。警察官は他の仲間の有無や気が付いた時間等を聞いてきたが翔は全く分からないと返事した。
二人の住まいと連絡先、翔のステイ先を聞き又伺うかも知れないと言って、三人に礼を言い送り出した。
警察を出ながら高垣は「本当に危ないとこだったな! 耳だから助かったが少し横にずれていたら死んでたぞ‼」
高垣はそれを想像するとゾクッとした。
「翔! お前こんな事が良く有るのか?」
翔は驚いて、「高垣さんとんでもない、勿論初めてですよ!」
「しかし身体が勝手に動いた!!は、確かにラグビーのジャッカルにそっくりだな……」と高垣は笑った。
高垣は翔に疲れただろうと言い明日は午後からで良いからゆっくり休め! 何か有れば直ぐ連絡するように指示して、西田と一緒に帰って行った。