翔は、近くのリカーショップでワインと炭酸水を買って、ヘッドギアを付けてピカデリーホテルへ歩いて向かった。
ピカデリーホテルの階段を上がろうとした時、昨日のようなチリチリした視線を感じ、直ぐにエレヴェーターへ乗る事を止め傍のトイレに入った。
中で用を足しジッとして感覚を研ぎ澄ましたが、チリチリの感覚はもう感じず、右手に持っていたワインの袋を手洗いの下に置き、念のため樫の木の棒を直ぐ抜けるように左腰に差した、手に持っていたウエールズのラグビーパーカーで隠すと再度ワイン袋を持ち、トイレを出てエレヴェーターに乗り505の部屋を目指した。
ジェッタはピカデリーホテルの前に有るバーガーショップ脇のテラスでダン、イマルと雑談をしている風を装い、ホテル入口をサングラス越しにじっと見つめていた。
三人は朝から半日近くずっと座っている。テラス席は幾つも有るのでそう目立ってはいないがそれにしても長く居すぎるな……とジェッタが思った時、ホテル入口の階段を上がって行くあの邪魔したやつを見つけた。変な帽子を被ってゆっくりと歩いてホールの中へ消えた。
ジェッダはテーブル上に載っている溢れるゴミをダンに目立たないよう処理するように指示をして今後の手順を考えていた。ジェッタ達三人はアジトからホテルへ着くと直ぐ中に入って下調べをし、ホール・トイレ・非常階段の場所、資材搬入の勝手口・清掃員控室・ガードマン控室の位置等必要な情報を頭に叩き込んでいた。
サリムから部屋番号を聞いていたので行動を起こすのみだったが、やはり暗くなってから動く事にして先に停めて有るバンへ行き、中で待つ間にイマルにリカーショップへ行ってビール六缶パックとポテトチップス袋を買ってこいと金を渡した。
イマルは嬉しそうな顔をして出て行きニコニコと戻って来た。直ぐに缶ビールを分けようとパックに手を伸ばしたらジェッダに激しく引っ叩かれ「触るな!」と睨まれ吃驚して黙ってじっと座った。
夜の八時近くになると人は殆ど見かけず、ジェッダ達三人は車を出てホテルの方へゆっくりと歩き出し、ダンにホールからトイレに行ってそのまま直ぐエレヴェーターに乗り、二階のエレヴェーターホールで待つように指示した。