「・・・・・っ! に、人間っ!?」
「うん。人類史上最も長く生きている古代の魔法使い。自分の作った魔法で、寿命を延ばしているらしい。」
「そんなことができるのか?」
「信じられないけど、できるんだろうね。」
「・・・・・・・・・・・」
「魔王には目的がある。今の世界を破滅させて、なにもかも全部自分だけが独占できる新しい世界を創ること。」
「どうしてそんなことを・・・・・・。」
「多分・・・・・・『本能』なんじゃないかな?」
「本能?」
「お腹が空いたから食べものが欲しい。1人は寂しいから恋人が欲しい。貧乏だからお金持ちになりたい。」
「・・・・・・・・・・・」
「人なら誰しもが持ってる『本能』みたいなものが、魔王にとっては、新しく世界を創ることなんだと思う。」
「・・・・・・・・・・・」
「そして、世界を創り変えるための歪んだ努力の過程で、『魔物』を生み出したんだ。」
「・・・・・・・・・・・」
「僕の成果はこれくらいかな。」
「十分だ。ユウ。よくそこまでわかったな。」
「情報を集めるの得意だから。」
「シンの役に立てて良かったよ。」・・・・・・・・・と、ユウはニコリと笑顔を見せた。
とある雪原の丘
魔物に村を襲われて、家族や故郷を失う。
この世界では「よくある話」だ。
夜。
吹きつける吹雪の中、1人きりで歩いている少女もまた、その「よくある話」の餌食となっていた。
命からがら逃げてきた少女には悲しむ暇すらなく、寒さを我慢して、震える体に鞭を打ち、
ひたすらに足を動かすことしかできなかった。
「・・・・は・・・・ぁ・・う・・・。」
もう少女は限界だった。
なにも食わず。なにも飲まず。
ここまでの道のりで肉体は痩せこけており、その命が尽きるのも時間の問題であった。
「・・・ぅ・・・・は・・・ぁ・・っ。」
そして、とうとう少女は倒れてしまった。
走馬灯が駆け巡る。
今までの思い出が、楽しかったあの頃の思い出が、少女の頭の中を埋め尽くした。
(お父さん・・・・・・・・・お母さん・・・・・・。)
意識が朦朧、視界も霞み、自身の体からは急速に力が抜けていってしまう。
もう立ち上がる気力は欠片も残っていない。
来るべき死を、大人しくここで待つ。
少女にとって、それは覆りようのない運命・・・・・・・・・のはずだった。
(貴方、面白い匂いがするわね。)
記憶にない誰かの声が、脳内に響いてきたかと思うと、その瞬間、少女の視界は真っ白な光に染まった。