言って、はるかは腰を折り、向こうへ歩き出す。

「あ、待って」

急いで後を追う。

「せっかくだからブランチしません?」

はるかは足を止め、振り返る。

「いえ、帰ります。だって千春さんいないし」

今度ははるかにムッとした。わたしじゃ役不足なわけ? 

ていうか、初対面なのにその態度は失礼でしょ。

そう言いたいのを堪え、優しく話しかける。

「こうして知り合ったのも何かの縁だと思うしご飯しながらおしゃべりしませんか。わたし、あなたのこともう少し知りたい」

この言葉は本音である。

サイトのプロフィールを見てもはるかの情報が全くないのだ。

年齢不詳。

出身地不明。

趣味特技なし。

その他、自己PRも特になし。

そんな彼女がなぜツイン・ファクトリーに登録したのか。

謎である。

「帰ります」

身体を反転させ、はるかは歩を進める。

「ひとつだけ教えて!」

わたしは追いかけ、はるかの肩を掴んだ。

「自分とそっくりな人間に会ったの、わたしで何人め?」

はるかはおもむろに顔を向けると、何食わぬ表情で淡々と話す。

「三人めだけど。それが何か?」

【前回の記事を読む】【小説】自分とそっくりな後輩が一緒にいたのは…私の彼氏!? 確認するか悩んだ末に…。