本当にそっくり。
黒髪の女の子に会った瞬間、わたしは全身が粟立った。
マスク姿とはいえ、恐ろしいほどに瓜二つなのだ。
「初めまして。はるかといいます」
そう言って、軽く会釈した。
さらさらとした長い黒髪のはるかは、わたしと背丈がほぼ同じで、スラリとした体型の女性だった。足が綺麗に見えることを意識しているのか、七分丈のレギンスに、上はレースのブラウスを着ていた。
モヤイ像の前にそっくりな人間が二人。
目の前を通り過ぎる人たちの視線が、否応なしに向けられた。わたしは別段人見知りというわけではないが、並んで立っているだけでなんだか気まずくなった。
一歩、また一歩、さらに半歩、横に移動する。
二人の距離が離れたぶん、ますます話しかけずらくなった。お互いに名乗った後の会話はなくなり、時間だけがいたずらに過ぎてゆく。
「遅いなー、千春」
わたしは腕時計を見た。十一時二分。待ち合わせ時刻から三十分が過ぎている。三人でブランチを食べようと約束していたのに。何かあったのだろうか。
「あ、ラララインきました」
スマホをいじっていたはるかが言った。ラララインとは、日本で多く利用されているコミュニケーションアプリだ。
「急用ができたって、千春さん」
なぜわたしに連絡がないの?
ちょっとだけムッとしたが、すぐにラララインは繋がっていないことに気づく。交換したのは電話番号だけだ。
「わたし、帰ります」