これら東電とGEの「不作為による過失」をはじめその責任を追及して多くの訴訟が起こされたわけですが、日本では手段が限られ、追求し切れずにいることはすでに述べた通りです。

しかし、米国ならばいろいろな手段や制度が揃っています。そこで実際に米国へ乗り込み、米国のGEを米国の司法で裁こうと考えた人たちがいました。

―だが、ボストンの裁判所はあっさり却下―

事故から6年8カ月が経過した2017年11月21日、福島県内の2人の医師と4つの病院、中小企業やその経営者が代表となり、GEが本社を置く米国マサチューセッツ州のボストンの連邦地方裁判所に、クラスアクションの訴状を提出しました。

「GEはコストを抑えるため安物の原子炉を設計した。また、海水をポンプでくみ上げられないため原子炉建屋を海抜10メートルという低地に建設し、独立したバックアップ電源などの安全装置を装備しなかったことで、結果的にメルトダウンを引き起こし、深刻な放射能の放出を招いた」。

その責任を追及する訴訟です。クラスアクションならば、一人がクラスに属するものを代表して訴訟を起こすことができ、勝訴すれば、同じ被害に遭った全員の損害賠償が可能になります。

米国での裁判が始まれば、証拠開示手続きも可能になり、日本よりも格段に多くの情報を集めることができます。陪審員による世間常識に基づく妥当な判断も期待できます。懲罰的損害賠償が科される可能性も高いでしょう。被告となるGEは証拠開示手続きに応じる膨大な手間を嫌い、早々に和解を持ちかけてくるに違いありません。

GEの評判には大いに傷がつき、リスクがどれだけになるか想定もできなくなります。不確実性を嫌う投資家たちは、GEを投資対象から外すことにもなるでしょう。GEとしても早期に訴訟を解決する必要が出てき和解のチャンスも交渉力も生まれます。市場も原告たちに味方してくれることになるわけです。

米国司法の手段や制度を存分に活かせば、きっと正義は実現する。多くの関係者が、大きな期待とともに成り行きを見守りました。しかし、結果はあきれるものでした。