「SPH? どういうことです?」
「SPHは憑依生命体の動きを止めるのに、あのショボいゴムバンド砲しか使えない。そんな連中からしたら、おまえの力は喉から手が出る程欲しいって訳」
確かにSPHに限らず、人間と憑依生命体とでは対等な戦闘は行えない。その事実は当然のように常識染みている。
だが理屈は分からないが、それをやってのけた。SPHと呼ばれる彼らにさえ手が届かない強大な力を会得した事の重大さに、今頃気づき焦りが生まれる。
本来、憑依生命体と闘うことを義務付けられているSPHから見れば、俺は非常に興味深い実験サンプルになるかもしれない……って事?
「(……え? こっわ! 怖いわ!!)」
自分で勝手に考えておいて、勝手に恐怖する。
でも、大丈夫。そんな恐怖もきっと杞憂に終わるだろう。
何故ならSPHとは、この都市に現れる憑依生命体を捕縛することを目的とした、俺たちからすればヒーローみたいなもんだ。そんな彼らが万が一でも民間人を恐怖に陥れようとするか、答えはNoだ。
「……どうして? SPHは市民のためにこの都市を守ってるんですよね? なのに、民間の俺が逆に危ないってことになるんですか? 流石にそれは考え過ぎなんじゃありませんか?」
「うーん、そうでもないよ。だって、SPHはオレ達民間には言ってない秘密裏に動いている計画があるからかな。今は詳しく言えないけどね」
瞬時に「嘘」だと思った。
有り得ない。警察が殺人事件に関与しているくらいに、ありえない。
俺は院さんの言葉に眉を寄せ訝しげに問うた。
「根拠はあるんですか?」
「見せられるだけの証拠はない。でもレッカ君もSPHのこと、全部知ってるって訳じゃないよね」
「……」
「意地汚い言い方で悪いね。でも、安心しろ? ヤバくなったら絶対助けに行くからな」
「助けにって……、院さんが?」
「ああ、オレもお前と同じ力を持ってるから役立たずにはならないはずだし、仲間は沢山いる」
「俺と同じ力?」