四 午後……十二時二十五分 警察到着
時計の針が十二時半を回る前、最初の警察車両がドリームランドの入場ゲートに到着した。
入場ゲートには『立ち入り禁止』と表記されたテープが敷かれ、ドリームランドから出られなくなった来場客はパニックを起こし始めた。大きな混乱の中、後続のパトカーの扉が開く。
まず降りてきたのは警視庁に所属する情報分析官、金森正平だ。警察らしくなく、背中が丸まっている。自信なさげな表情を見た来場客は、この警察官で大丈夫なのか、と不安を口にした。
更にその後ろから来たのは、パトカーではなく真っ黒なクラウンだった。ピカピカに磨かれた車から一人の大柄な男が出てくる。
黒のコートを羽織り、ネイビーのダブルスーツに身を包む。アイロンがかかったシャツはストライプという成金を思わせる風貌だった。
警視庁捜査一課の刑事、貝崎啓一だ。
そこで、すかさず金森が貝崎に頭を下げる。
「お疲れさまです、貝崎さん」
「まずは来場者の混乱を何とかしろ。これでは捜査続行の障害になる」
貝崎は金森を無視して全体に指示を出す。
「それから、速やかにマスコミ各社に報道規制を敷け。それと、ドリームランド全体のマップを用意して、この観覧車の概要及び設計を把握してる者を連れてこい!」
そう言うと複数の警察官が「ハッ」という緊迫感を漂わせつつ敬礼した。貝崎は、内ポケットから警察手帳を取り出し、白い息を吐き出しながら続ける。
「申し遅れたが、私は警視庁捜査一課の貝崎だ。城南警察署の諸君、ご苦労。私は独り身だが、諸君らには家族がいるだろう。事故だか事件だか知らないが、とっとと解決して家に帰ることを推奨する。今日はクリスマスイヴだからな」