思いの丈を話せた武藤は続けて、

「一一ブロックに最低一台は必要となる党の街宣車はクラウドファンディングで賄う心算です。七、七〇〇万円ですから何とか集まると思います」

と話すと、

「何かね? そのクラウド……とは?」

と山脇に質され、

「最初に使い道を公表して、主にインターネットで共感してくれた人から募金を募る事です。日本全国から募金を集める事ができる為案外目標額が集まりやすいんです」

と解説した。

「ほお、今時は私が世話になったハウスリースバックやクラウド……と以前は考えられなかったお金を作る方法があるんだな、『隔世の感』があるよ」

と言った。

「分かった、私も知り合いの会社社長や教え子の会社社長達を中心に企業献金をお願いしてみるよ。私にだって未だ数億くらいの集金力はあると自負している」

と頼もしい事を言って下さった。そして、

「なんたって、私には『冥土の土産に』という殺し文句が使える。下手に断ると化けて出られそうだと思わせればちょろいもんだ」

と言ってお道化(どけ)て見せた。その上で山脇が、

「政党にとって党としての理念は最も大切なものだ。その理念をより良きものとする為、この本を参考にしては貰えないだろうか、頼む」

と言って山脇が河井栄次郎の著書を二冊ほど渡してきた。その上で、

「私のバイブルだった『学生に(あと)う』の『人格陶冶(とうや)』を目標の一つとして貰えると河井栄次郎先生も浮かばれる」

と言った。これを受け武藤が、

「私が立ち上げる政党は、スイスやフィンランドやノルウェーの様な国民一人当たり総所得の高い国を目指します。河井先生の思想に合致していると思います」

と言って胸を張った。

「そうか、それを聞いて嬉しいよ、頑張ってくれ!」

と言い残して山脇はこの日は帰って行った。

街宣車購入の為のクラウドファンディングは目標額を八千万円としてスタートすると結党大会までに目標額の八千万円を超えて集まっていた。同じく結党大会までの政治献金額の合計は六億円を超え、武藤は自宅を担保にしての金融機関からの借り入れをしなくて済んだことにほっと胸をなでおろしていた。