第2章 対策1 学校教育に対する処方箋
06 理工系学部の授業料優遇と初任給の待遇改善
これもアメリカの例で恐縮だが、アメリカの大学ではどの学部・学科を卒業するかによって、明らかに初任給が違う。理工系の中での初任給が高い学科と、文系の中での安い学科を比較すると、最大約2倍程度の初任給の差がある。当然、生涯収入も大きく違ってくる。
それを分かっている文系の学生が挙ってMBAに進学し、高収入を得ようとしている。そのため、アメリカの高校生は進学の際に、自分が何を勉強したいのかを考える前に、将来得られる収入も意識しながら、進学路を決めている。
一方日本では初任給はほぼ横一線である。そして生涯収入も学部によっての違いは殆どない。そうなると、自ずと苦労して理工系の学部に進学を希望する学生は少なくなる。そして日本での生涯収入の差は業種または企業による差が主で、理系・文系での差はあまり明確には表れてこないし、学生もそれ程意識していない。その結果、高い生涯年収を得られる可能性が低い職業への就職を前提とする学部や専門学校に進学する学生が多い様に感じている。
そしてその結果、日本の製造業が少しずつ衰退していっているのではないだろうか。追いつき追い越せの時代は目標があったのでこれでも良かったかもしれないが、これからは大学がもっと沢山の技術者を育て、その沢山の人達が社会で切磋琢磨できる様になる必要がある。これを解決する処方箋として、次の二つが考えられる。
◦理工系の大学の授業料を優遇(安く)する
◦理工系出身者が主に進む職種の初任給を上げる
一般的に理工系の学部の方が大学運営により多くの費用が掛かるため、どの大学も理工系の授業料が高めになっている。しかし理工系は国策として優遇し、授業料を安めにすべきではないだろうか。その結果、より多くの学生が集まる可能性がある。
また卒業後の初任給でも、理工系の学生が一般的に進む職種の方が高ければ、学生が集まる可能性がもっと高まる。是非この処方箋を国策として考えて欲しい。
余談だが、一般的に数学を中心とする理系の勉強を行う事で、論理的な思考を付けられると云われているが、同時に矛盾を見つける能力を付ける事ができる。
昨今、世の中には矛盾を含んだ事項が多くなってきており、理系に進み易くする事で、矛盾に惑わされない能力を付ける事ができるのではないだろうか。