第一章 目に見えないもの

スペクタクル

夕暮れ時の空がとても綺麗だったので、車を停めてパシャリと撮影しました。空が色とりどりに染まると見入ってしまうほど美しいですね。の美しさは約八分前に太陽が照らした光によって作られています。

実は、私たちが見ている日没の太陽は、約八分前に沈んだ太陽なのですよ。ということは、私たちはリアルタイムに物事を見ているわけではないということを意味しています。

そういえば友人の一人が、

「目に見えるものはすべてまやかしだと思っているの」

と言っていたことを思い出しました。私たち人間は、リアルタイムに物事を見ているわけではないし、見たいものだけしか見ないし、記憶したいものだけしか記憶しないという特徴を持っているのです。

例えば散歩をしていても、景色は何も動かないでしょう。私の散歩コースには学校やコンビニなどさまざまな建物がありますが、それはいつも動かずに同じ場所にあります。散歩をしている私が動いているから、その場所に行けば学校やコンビニを見ることができるのです。

でも、散歩コースには草も生えているし、石ころだってたくさん転がっています。見えるものは実はたくさんあるけれど、見るものは自分の見たいものだけなのですね。夕焼け空もみんなが見ることができるけれど、それが見えていても何も感じることなく違うものを見ていれば、その美しさに魅了され、車を停めて写真を撮ることもないのですね。

何だか不思議ですね。私たちは見たいものしか見ていないのです。

また、記憶したいものだけしか記憶しないという特徴もあるのです。そして私は夕焼け空をしっかりと見留め、魅了されました。どうして夕焼け空は赤や黄色に見えるのでしょうか。

それはね、太陽が地平線近くにあると大気中を通る太陽光の距離が長くなるからなのです。光は波長の長い順に「赤橙黄緑青藍紫」になります。そうすると、赤や橙や黄色は、太陽との距離が長くなっている証拠の色ということですね。