「それが無いのが不思議で、私は愛情が薄いのかもね」
と少し首をかしげた。
「貴女は自由と趣味に結婚したのよ」
「私もそう思う」
と結衣が花帆に同調した。先ほど注文した昼食が来た。店員さんが後ほど飲み物を持ってきますからと言い、スパゲッティ、卵サンド、アメリカンクラブハウスサンドをテーブルのセンターに置いた。
「どれも美味しそう、アメリカンクラブハウスサンドは美味しいから一つ食べてみて」
と言い結衣と花帆に勧めた。花帆が口に含み、
「トーストの味がいいね、焼き具合が最高」
結衣も食レポよろしく、
「挟んであるビーフの味が、いいお肉という味だわ。良かったら卵サンドも食べてみて」
「ありがとう、いただくわ」
三人は和気あいあいに表情を崩しながら、暫し無言で食べることに徹していた。お皿の食事が半分ほど進んだ頃、美代子が紅茶を一口飲んだ後、
「皆、日頃主人とはどんな会話をしているの。ベッドは別々?」
「急にどうしたの?」
と花帆がフォークに乗せたスパゲッティを口元手前で止め、聞き返した。
「皆、私より結婚の大先輩だから」
結衣が
「私は、八畳の洋間にベッドを二つ置いているの。でも左右に離してね。主人のいびきがうるさくてそうしている。本当は部屋数があれば別々の部屋にしたいの」
「子供はどうしているの?」
「子供部屋で寝ている。自分の城がほしいみたいで本人が希望したの」
「花帆はどうしてるの?」
と美代子が順に仕切った。
「うちは、生活のリズムが違うのよ。だから三年位前から別の部屋にしている。主人は仕事の疲れか何か知れないけど、夜十時過ぎにはベッドに入っている。私は若いときから夜更かし型だから、寝る時間は十二時頃だね。子供たちを寝かした後、跡片付けをして主人が寝たのを見届けてから、好きな本を読んでるの。そうすると自然に十二時近くになると睡魔がやって来るの。主人と会話するのは主に夕食を一緒に食べる時ぐらいで、結婚生活を長く続けているとかしこまった会話は少ないかも。結衣もそうでしょう?」
「営業の仕事だから、いろんな人に会うので話題に事欠かないね。私から聞かなくてもぼそぼそと愚痴をこぼしているわ。私、会社のことに興味ないから適当に相槌を打っているの。それでも疲れることがあるよ」