迷いながら揺れ動く女のこころ

三人の間に清々しい時間が流れ、久しぶりに再会した嬉しさも相まって、今日、会った時より幾分顔が上気しているように見えた。美代子が

「さっきフィットネスの話をしたでしょう。来週申し込みしてみるわ。最近体を動かしてないから、初めはエアロビクスの初級から始めて、花帆が言っていたホットヨガもやってみたい。平日なら週に二回は通えそうだから、それに週一回のパステル画の教室も続けているからね」

「結衣もパステル教室を続けているでしょう? クラスが違うから教室で会うことはめったにないね。私は初級で結衣は上級クラスだから。高校の時、クラブ活動が美術部で私は家の商売の連想でローケツ染めを始めたからね。今思えば結衣と同じパステルを選択しておけばもう少し腕も上達して、趣味として、家にいても有意義な時間を作れたかもね」

「上手に描こうとするから、筆が進まないのよ。別に展覧会に出すとか販売するとか考えていないでしょう。気楽に旅行に行った時、写真に収めた場面とか、散歩の途中で見た風景など、その時に見た色彩を記憶が覚めない内に画用紙に表現すれば、生き生きした画になる。美代子はセンスがあるから向いてると思う」

と結衣はパステルの先輩としてやる気が出るように元気づけた。美代子は結婚を決意した一つの理由として、今の主人から

『自由に趣味に生きてください』

と言われたことで、束縛されない生活が出来ることを想像して決心したことを二人に話したが、現実は束縛されないが、果たして心が満たされているか、と自問すると、決して満足がいく状態ではなく、やりがいが持てない。目的意識が欠乏している自分と向き合っている日々が多く、将来を案ずるようになってきていた。花帆が美代子に向かって

「何をぼーっと考えているの?」

「ごめんなさい。そういう風に見えた?」

「家政婦さん、美月さんといったよね。その方は結婚する予定はないの?」

「以前福島に住んでいた、主人の遠縁にあたる人で、両親はすでに無く独り身なの。高校を卒業した後、山形家に家政婦として入ったの。また勉強家で夜間の大学にも仕事と両立させながら卒業した、芯の強い人なんだと聞いている。普段の生活を拝見していると異性に触れる機会もないよね。一番身近な異性は美月さんが介助している主人だけになる」

「確か、ご主人より三つぐらい年上でしょう」

「そう、主人とは姉弟の関係みたいだよ、と言って異性を感じたことが無いと私の前では言っていた。でも子供じゃないから毎日接していると情を感じるわね。だから最初入浴の介助を美月さんがやっていると聞いた時、えっ? 本当? と思った。あなたたちだってそう思うでしょう?」

「そうねえ、よく家政婦さんで、年取った人が介護センターなどで行っているでしょう。あれは職業として割り切れるけど、年齢が接近している男女がお風呂場での入浴介助にはちょっと抵抗があるわね。美代子は何にも感じないの?」

「どんな?」

「例えば、美月さんに対して嫉妬とか」