2022年8月7日。

私は、彼が可愛いと言ってくれたワンピースを着て会いに行った。面会場所で待っていると、看守の人が彼を連れてきた。彼は少し瘦せていて雰囲気が変わっていた。ぐったりとした様子で椅子に座る。

「小森さん久しぶりだね。僕の大好きワンピースを着てくれたんだね。今日は眼鏡なんだね。とっても可愛いよ。君にまた会えてうれしいよ。ありがとう」アクリル板の向こうにいる彼が愛しくて、涙があふれだす。眼鏡を外し、本当の自分の姿で彼に想いを伝えた。声を震わせながら。

「高橋君、気づくのが遅くなって本当にごめんなさい。こんな醜い顔の私をずっと守ってくれてありがとう。お返事遅くなりました。私は、高橋君を愛してます。あなたの彼女にしてください」彼からもらった手紙を前に置く。

彼がニヤッとした。その顔に見覚えがあって頭が痛くなる。

2009年8月7日事件の日。

公園で高橋さんと私が手を握って別れる。

前川さんが水飲み場で隠れている。前川さんに小さく手を振る私……。

背後から誰かに殴られ、倒れた私に犯人が馬乗りになる。石を持つ両腕の隙間から見えたのは、水飲み場に隠れて震えている前川さん。

前川さんと目と目が合った瞬間、目の前に現れたのは高橋優だった。

「僕のものだ」と笑いながら、ドスッドスッドスッドスッ……と石で殴り続けた。

私は全部を思い出した。中学時代、私は、高橋優からの異常な愛で苦しめられていた。彼からの告白は47回。あの公園で断るたびに怖くて怖くて怯えていた。365日、ずっと見られている感じがして、毎日が苦しかった。それを見ていた前川さんが私を心配して、いつも私のそばにいてくれた。

ある日、私は校舎の屋上の上に立っていた。前川さんが走ってきて、

「なぜみなみが死ぬの。ここまで苦しめてきた高橋が死ぬべきでしょ」と、泣きながら抱きしめて怒った。そして、4人で高橋優の殺害計画を立てた。

【前回の記事を読む】「私の顔を返して、私の顔を返してよ!」鏡に映っていたのは、可愛いワンピースを着た化け物だった