待望の第二子
乳がんはホルモンとの関係があるので、妊娠は病気を促進させてしまう。だから出産するなんてあり得ないことなのだが、どうしても第二子がほしくて私は出産をした。
抗がん剤の薬を飲んでいたので、自分なりに調べた。妊娠を確認すると産科に向かった。産科医師に事情を説明すると驚きつつも私の気持ちを理解してくれて、予想されることも全部話してくれた。その上で外科の主治医の元に話しに行った。
その時の会話を、はっきりと覚えている。外科医からするととんでもないことなのだから。
「えええ~~、やめてほしい」と、まさかの外科医の驚きの声。
「カーテンの後ろに患者さんがいます」と産科の医者はすかさず返した。自分で調べた中には乳がんが進行している時には子宮を取ることもあるという。妊娠をするということは即ち自分の命を落とすことになるのだから、言われても当然の言葉と覚悟していた。それを分かっていても産みたいと思う自分もかなりの無鉄砲者だ。しかし、何としてももう一人産むことを望んだ。
診察室で協議の結果、外科医からの言葉は「産科と外科でタイアップしていくよ」と了承してくれたのだ。無事に次男を出産した時には、外科の主治医が病室まで来て祝福してくれた。
周りの人に元気な次男の「真司」誕生を報告すると、喜びよりほっとした言葉が多く聞かれた。親や兄弟、皆にどれだけの心配をかけたのだろうかと反省と感謝でいっぱいになった。抗がん剤を飲んでいたこともありリスクがあった。
心配をかけての出産は、決して良かったとは言えない。これは、私の独りよがりの思いであり、決して真似をしないでほしい。取り返しのつかないことになりかねない。しかし、次男の真司が元気に産まれてきてくれたことは私たち夫婦には大きな喜びとなった。
そして、片乳の子育てが始まった。