第2章 人間と人生の質を左右するすべての源「思考力」人間力の源
考え方の違い
ボクは変人ポーがこのとき言おうとしていることが徐々にわかりかけてきた。以前とは違い、確実に理解して吸収できている実感もある。何よりも変人ポーに質問して会話が成り立ってきていることが単純に楽しかった。
そして変人ポーはいよいよこの思考力について深く追究していった。
Aさんがこう言った。
「私には、それは買えない」
Bさんはこう言う。
「それを買うにはどうしたら良いだろう?」
また、Aさんタイプの人はこうも言う。
「それはできない」
一方、Bさんタイプの人はこう言う。
「どうやったら、それができるだろう?」
「これも、どちらも正しい。というか、どちらも、当人にとっては正しい、と言ったほうがわかりやすいかな」
「父さん、良くわかるよ」
と言いながらボクはクラスメイトを想像して一瞬ニヤッとした。
「大事な部分だから良く覚えておくんだ。Aさんがそれをできる能力があるかないかは別として、本人ができないと言うのだから、できない。つまり、それを言った時点でAさんの思考の活動は停止している。しかし、Bさんのように思考が働いている状況であれば、それをできる可能性を持つ。少なくともAさんのようにゼロではない。
どちらも、その人が言っているのだから、その人にとってはそれが現実となる。そして重要なのはこの場合、それぞれが生み出す結果が異なってくるということだ」
「さっきの話で言うと、実際に幸せか不幸せかは別として、どう思うかでそれぞれが生み出す結果が違ってくるってこと?」
「その通りだよ。わかってきたね」
「でも、何でこうも違った思考が出てくるんだろうか。もし本当にそうなるんなら、みんな良いほうに思い考えたほうが良いのに……」
「それは、その人の持っている現実がそれぞれみんな、違うからだよ。ではなぜ、同じ人間なのに、こうも違った現実を持つんだろう。それは、その人の考え方が違うからだよ。そしてこの“考え方の違い”は、文化の違いでもわかるように、それぞれの育った環境が違うからだと言える。
つまりは、環境を変えれば考え方も変わり、次第にその人の現実も変わっていく、とも言える。一つ面白いのは、その逆も然りということだ。考え方を変えれば環境も変わり、次第にその人の現実が変わるとも言える。ここでは、その順番はどちらでも良い」
どちらでも良い、と言っておきながらこのとき変人ポーはこんなことも言っていた。ボクには興味深い話だったので余談までに紹介しておこう。
それは人間、変えられないものと変えられるものがあるという話だった。
◆自分で変えられないもの
・他人
・過去
◆自分で変えられるもの
・自分
・未来
また、変人ポーが言うには「自分さえ変われば他人や過去でさえも変わって(見えて)くる」というものだった。そして、その自分を変えるものの正体こそが、思考という話だった。