第二楽章 苦悩と悲しみの連鎖

Ⅲ 添い遂げたかった愛のカタチ

英介さんが父子家庭で子どもさんを育てたのか、あるいは、好きになった女性と暮らすようになったのか、ご両親が子どもさんを引き取ったのか、その後の経緯は定かではありませんが、誠子さんが望んだような晃くんに成長されたことを祈りたいと思います。

ある日突然に、家族を失うことの悲しみを、もしかしたらいつかこの先、誠子さんの魂は体験することになるのかもしれません。因果の法則が有効であるなら、縁の巡り合わせがそうさせることになるのではないでしょうか。

私の母は、私が30代半ばのときに、ある日突然帰らぬ人となりました。病院に駆け付けていた弟から、亡くなったという連絡を受け、母と対面したのは、夜中に近い警察署の霊安室でした。

その日、どうしても母に聞きたいことがあって、夕方実家へ電話をかけたのですが留守でした。いつもなら夕飯の支度をしている時間帯のはずなのに、変だなあと思いつつ電話をきりました。ちょうどそのとき、救急搬送された病院で、処置中だったわけです。

2か月ぶりくらいに再会した母の顔は、ただ目を閉じて眠っているようでした。ヒンヤリした殺風景なその部屋にひとり、母は一晩置かれました。あまりにもあっけなさすぎて、お骨になるまで、母を亡くしたという実感がまるでありませんでした。今は「突然、心臓が止まっちゃったんだから、仕方ないじゃない」と母は笑って言いながら、あちらの世界でよろしくやっているようです。

私自身も過去、湖か沼かで入水して、ひとりの女性としての最期を迎えたことがあったかもしれない気がします。なにかの無念を残しての選択だったと思われます。あちらとこちらを行ったり来たり。いろんなシチュエーションを体験しているにすぎないのかなと思えるようになりました。

どんなことが起ころうとも、死は次の新しい旅への旅立ちです。大きな視点で考えてみると、ひとつの物語がエンドを迎えたに過ぎない。大きな愛の空間に護られ、いろんな体験をしているのだと信じています。