十月三日 お花畑

ダリアがゆらゆらしている…と思ったらあらあら神父さまお花の中にかくれるようにしゃがんで小石を並べて日本語のおけいこ。

「ひとおつふうたつみつうよつう…」

蜜蜂がポンポンダリアをからかいます。

やっつ()きょきょのつ()じゅっ()

ここでにっこり。蜜蜂が飛び立ってダリアの紅がかすかにゆれました。

「そのときバラが、バラバラバラ赤いのバラも白いのバラも黄ィイのバラもバラバラバラ……」なんのことだか分りますか?これはゴッツィ神父の、お説教です。どうやら美しい奇蹟のお話のようなのです。ひどいもんでしょ?私はおせっかいなので神父様の日本語教師のつもりで厳しく教えましたが、力が及ばなかったのでした

お母様この地図を見て下さい

ここの院長様はマリア・ルーチア様

ドイツの方です

私達生徒の間では

「ルチア様はとてもお勉強のできる方で、博士号を四つもお持ちなそうよ」

といつも感心していましたが、ここで一番多いのはドイツの方でボルクン湖もハンゲ湖も故国のなつかしい名を付けたのだそうです

(黒一点)のエンリコ・ゴッツィ神父様はイタリア人ですフランスの方も多いです

十月六日 星空

そそっかしい神様が宝石(はこ)につまづいたもんですから…

あら、つまづいているそそっかしい神様ってエンリコ・ゴッツィ神父様にそっくりだわ

 

【前回の記事を読む】草の上に輪になってお誕生日のお祝い…栗の木の下に取り残され空を見上げる