小説 『差出人は知れず』 【第8回】 黒瀬 裕貴 免許返納を拒んだ老人がブレーキを踏み間違え、車は妻に突っ込んでいった…事故後、夫は「加害者家族を妻と同じ目に遭わせたい」 【前回記事を読む】「母さん。死んじゃ駄目だ。俺、まだなんにも親孝行出来てないんだよ。」中学生の男の子は嗚咽しながらも話しかけることをやめない「俺たちが何をしたっていうんだろうな」亡霊のように佇む東は両の拳を強く握る。爪が皮膚を食い破り、血が滴るのではないかと思うほど強く。「こんな……こんな目に遭わなければならないことを涼子がしたっていうのか。生きていれば無意識に人を傷つけることだってあるだろう。…
小説 『魔手 隠密捜査官6』 【第5回】 冬野 秀俊 「いるんだろう、出てこい!」誰かに命を狙われているが、警察を待つしかない…突然「バーン!」と銃声が鳴り響いて—— 【前回の記事を読む】真夜中に熟睡を脅かす物音が聞こえた。壁に耳を当てると、呻き声を伴っていた。清一は覗き穴から外の様子を窺ってみた。そして、ドアを開けるときにもフックを外さなかった。これは、スージーに注意されていたことなので、細心の注意を払ってのことだが、飛び出した途端ボディーに強烈なパンチを食らってしまった。続いて奥襟を掴まれて宙吊りにされると、夥(おびただ)しいパンチが飛んできた。最初は急所…