鍼の響きとは何か

世間一般には、「鍼は痛いものだが、それを我慢すれば、三日もすれば、体調がよくなるものだ」という観念がありますが、それは間違いです。古い鍼や曲がった鍼を打たれたり、経穴を外れて打たれたりすれば、ただ痛いだけで、治療効果は得られません。

経穴は神経の上には無く、ごく少数の経穴を除いては血管の上にも無いのですから、痛かったり出血したりするのは、治療家のミステイクなのです。又、治療を受けてから二三日は体がだるく感じるが、それは「メンケン反応」であって暫く我慢すれば良くなる、と公言する治療家もいますが、これも間違っています。

施術行為は、生体に「刺激」というダメージを与え、その反発力を利用して病態を快方に導く方法なのですから、刺激の質や量を間違えると、生体の快復力や免疫力を低下させてしまい、だるさを残してしまうのです。

臨床上、ドーゼ(刺激)が過ぎた場合は「返し鍼」を打って、ダメージを残さない事が大切です。胃経と腎経への補法の鍼や、足三里と三陰交への施灸が有効です。

鍼の響きとは、チクチクしたり、ビリビリしたりする感覚とは似て非なるものです。深部感覚というか、ズーンと重くなる感覚を伴うもので、微少雀啄(じゃくたく)を加えると、温かくなり、やがて、安楽感にいたる感覚が生じるものです。これは、被術者だけでなく、施術者も同時に得られる感覚でもあります。

鍼灸にしても指圧マッサージ按摩にしても、生体内部を流注に沿って流れる「気」に異常が生じ、詰まっている状態を改善するために、その詰まりを除去して気の流れを整流させる事が目的なのです。気の流通が回復する時に、温かく感じられるのは、経絡の営みが改善され、組織や器官や臓腑が活性化され(酸素と栄養が十分に供給され)病態が改善されるからです。