【前回の記事を読む】昨今のデフレスパイラルは実はこのため!? 供給能力の持て余す「需要不足」って?

第一章 日本経済の分析

少子化によって、今現場で起きている事

ここで皆さんに質問したいのは、「自分の人生で一番お金を浪費したのは、一体いつ頃ですか?」という事です。多くの人は、仕事をし始めた独身時代、給料のほとんどがお小遣いだった時期ではないでしょうか? 

それが、結婚を境にお小遣いから生活費に代わり、そして仕事を引退して年金生活になり、更に自由に使えるお金が減る。日本の人口がそんなに減っていないにもかかわらず、日本は一九九九年以降、年々この高齢化が原因で、基本的な国民消費を減らし続け、これが原因でデフレスパイラルに陥っていたのです。その証拠が、日本と経済的な成熟度の近いアメリカ経済と比較してみると、はっきりとそれが数値に出ています。

写真を拡大 アメリカの人口と経済の推移

図からもわかる通り、アメリカは毎年たくさんの移民者が国境を越えて入ってきます。そのため日本のように人口減少や少子化の問題が発生していないどころか、毎年人口が三百万人ずつ増加している状態なのです。

そのアメリカと日本のGDPを比較してみると、二〇〇〇年の時点でアメリカのGDPは日本の約2.5倍程度でしたが、二十年経った現在では約4倍近くにまで引き離されています。仮に皆さんが商売を始めるとしたら、毎年お客さんが減り続ける立地と増え続ける立地、どちらに出店したいと思いますか?

この当たり前の質問の答えの通り、両国の経済成長の差が「その国の人口の増減が経済成長に大きく関係する」事をはっきりと示しているのです。しかし、実際の人口がまだそんなに減り始めていないのと、五輪効果によって、僅かずつでも経済成長している状況に、多くのエコノミストの目には、日本の実体経済がいかにボロボロになっているのかが、ハッキリと映らなかったのではないでしょうか。

しかし、日本政府がこの現状をわかっているのかどうかは別として、近年やっと日本政府も少子化問題に対して、本格的に何とかしようという動きが出始めてきました。二〇一三年、第二次安倍政権発足当時には「少子化危機突破タスクフォース」が設立され、二〇二〇年五月二十九日の閣議においては、子育て世代が希望通り子供が持てる数値、希望出生率一・八人を、政府の正式な目標として閣議決定されました。

しかし、この少子化という問題が、日本経済にとってどこまで深刻な状態になっているのか、政府が本当にわかっているのかどうか甚だ疑問です。まず、出生率が一・八人にまで回復するためには、年間何人の子供達がどれくらいの期間、生まれてこなければならないのでしょう?

二〇二一年十月三日の日経新聞の記事によれば、現在の日本の人口を維持するためには(人口置換水準)、出生率が二・〇七人以上でなければならないそうです。しかし、二・〇七人の出生率を達成するためには、年間約百四十九万人以上の子供達が毎年生まれてこなければなりません。しかし、仮に来年から百四十九万人の子供達が毎年生まれてきたとしても、合計特殊出生率が一・八人にまで回復するには、シミュレーションをかけてみたところ何と十三年の歳月がかかってしまう計算になります。

それに引き換え現在日本の出生数は、残念ながら昨年ついに九十万人を割ってしまったところなのです。反対に最後に百四十九万人の出生数を記録したのは一九八四年まで遡らなければなりません。日本政府の考えは、あまりにも甘すぎるといわざるを得ません。