しかしもっと深刻なのは、年金問題です。厚生労働省の試算では、日本の老人の数は今後増え続け、三千七百万人ぐらいで一旦安定して推移すると予想されています(図「世代別人口構成のグラフ」参照)。

写真を拡大 世代別人口構成のグラフ

問題は、この三千七百万人もの老人達に、現在と全く同じ条件で毎年年金や介護費用を支払うためには、十五~六十四歳までの人口が一体どれくらい必要なのか? という事です。私が試算した結果、最低でも約八千万人、一人の老人に対し約二・一六人の若者で支えていかなければ、財政の均衡は図れませんでした。しかし、今現在の日本の十五~六十四歳までの人口は約七千五百万人で、もうすでに現時点でさえ、その人数には足りていない状態です(なので、財政は悪化し続けるのです)。

しかも、八千万人という数字を維持するためには、単純に計算しても毎年最低百六十万人は子供達が生まれてこなければならない計算になります。仮に現在の政府が、今から少子化問題を何とかしようとしたとして、奇跡的に翌年から百六十万人もの子供達が生まれてきたとしても、その世代の人口が八千万人にまで回復するためには、その世代の日本人が全て入れ替わった六十四年もの歳月がかかってしまう計算になります。

少子化問題の本当の恐ろしさはここなのです。悪化するのが少しずつなら、改善するのも少しずつしか良くなっていきません。初期消火をおろそかにしてしまったばかりに、その後、大変な大火事になってしまったのと同じように、現在、日本経済の状況は簡単には消し止められないほど、深刻になってしまったのです。