【前回の記事を読む】「職場に行くと責められているよう」現代の若者の多くを襲う「適応障害」って?
第3章 ≪エピソード≫ 職場に行くのがつらい
1 働くって、こんなことだったの?
Aさん、Bさんのようなケースは比較的多く、典型的なタイプとも言えます。
研修中や先輩や上司のサポートがあるうちは大丈夫。むしろ楽しく働けていますが、いざ仕事が始まり、一人でしなければならなくなったり、責任が生じたりすると症状が出てきています。
実際の失敗などは大したことでないことが多いです。むしろそのささいなことに対する反応が問題です。
何かひとつ注意されたり叱られたりダメ出しをされたりすると、不安になり、気持ちを切り替えて前向きになることができない。そして、叱られるのではないか、責められるのではないか、自分を否定されるのではないかという思いが大きくなります。不安が生まれてきます。なんかイヤだなと思いながら仕事を続けます。
(こんなことは大したことではない)とわかっているかもしれませんが、徐々に体が反応してきます。
うまく行かないあるいは間違うということは、学校時代は不正解になりますから、不都合なことです。そのためちゃんとできるように教えてほしい、一人でするなんて不安だ、責任を問われるなんて不安だ、そんな働くことの入り口よりも前の感情が聞こえてくるようです。
仕事はどんな小さなことでも責任があります。ある作業、仕事をすることによってお給料は発生しています。ある意味でお給料の多さは責任の重さです。何もしていないように見える上司だって、より多くの責任を負っているからお給料も高いのです。しかしそれに耐えられない。言うなれば(働くことって、こんなことだったの?)心のつぶやきです。
学生時代アルバイトでもして小さな責任に慣れていたら、まだよかったのかもしれません。社会や仕事に対するそもそもの不安が見え隠れします。
そしてその不安を助長するのは、微妙で事実関係ははっきりしませんが、(ちゃんと教えてもらっていないのに)という思いです。実態の把握が難しい問題です。Aさんにしっかり教えていたのか、Bさんの能力の問題なのか、気にし過ぎなのか、サポートが十分でなかったのかはわかりません。昨今は人手不足や正社員の削減など、じっくり教え育てる余裕のないこともまた事実でしょう。