もちろん、同じ兼職でも暴力団員やその協力者というのは絶対に許されない。ところが実際には、これは昔から存在していると言われることが多いので困る。
警察官と犯罪者集団は正に敵対的関係にあり、ギャップとしてはこれ以上のギャップはないが、これは永遠の対立構造に位置するものであり、ある意味、警察の存在意義といえるほどのものなのであるが、この兼職が許されるものでないことは絶対なのである。
犯罪者集団にとって、それを取り締まる側の警察、検察、そして裁判官や時に弁護士まで、これを取り込むことがいかに有利な状況となるかを彼らはよく知っている。だから、金を渡したり、時に、ハニートラップによって弱みを握ったり、あらゆる方法で取り込もうとする。
そして一旦、取り込まれれば、上位にあったはずの地位が逆転する。犯罪者側の言いなりになるしかない奴隷と化す。その関係が露見しても、検察官や弁護士等その知識を利用できるものは、たとえ地位を失ってもそれなりにブラックの関係は継続されることがあるが、警察官のように地位を失うと権力側の情報が入らなくなる場合には、もはや本来のうまみはなく、あとは暴力だけの利用価値とされていわゆる鉄砲玉になるしかないこともある。
つまり、警察官にとってこのような集団に取り込まれることは社会的のみならず実際の死をも意味することにもなる。
ということで、畑山は現在、警察官でありながら、上司にも誰にもことわることなくそっと兼職を貫いているが、その兼職はもちろん反社会的勢力とは何の関係もない、芸人、そしてその中でもお笑いの漫才である。
繰り返しになるが、畑山には相方がいる。名前は加藤俊吉、コンビ名はピーカブーといい、そのピーとブーという名前で漫才をしている。まだ売れていないので、誰も問題にすることもない。
警察官のときは眼鏡をしていないが、芸人のときはダテ眼鏡をして髪型をリーゼントにしているせいか、気付かれたこともない。だから本業に差し支えたこともない。
もし芸人として売れるようになれば、そして、警察官の仕事にも影響が出てくれば、そのときはどちらかを選ぶことになるかもしれないが、まだそのときではないと考えている。