【前回の記事を読む】作品集「黒い花Ⅱ」より三作品

同じ道のドライブ

細い山道を通り湖のほとりを回って

あの女と走った道を、運転して来た

あの女の好きな赤い橋は写真にさえ写した

今、呆然としている。まだあの女を想っているのだろうか?

あの時は緑深き時、野山に飢えたる如く

一寸した景色にもあの女は嘆声を上げた

私は光が樹木に美しさを与えるのに感嘆していた

今、周りは枯れ葉色の山が続くばかりだ

ただ遠くに連なる山々が、まるで中国のように

丸く、突き上がり、青くかすんでいるのが同じだった

このようにして歳月は流れて行くのだろうか?

黒い雲におおわれた湖の富士を暗い気持ちで写した

あの時はあんなにもきれいな姿を現したのに ──

しかし、二人は何故あんな長いドライブをしたのだろう?