会場は大混乱に陥り、至る所でうめき声と泣き声が響いていた。
翔は、王子と王女の二人の頭を胸前に抱えつつ頭から突っ込んだ衝撃でふらっとするのを覚え暫くそのままで、二人を覗き込み「Are you OK?」と聞くと二人は怯えた顔をして首を振ってOKの仕草をした。
翔の耳からドクドクと溢れ出ている血が顎を伝ってボタボタと王女の顔へ落ち、顔や首・ドレスを赤く染めていた、それを首を回して見た王子は、吃驚し悲しそうな顔をした。翔は次第に力が抜け二人の上に覆いかぶさるようにして意識を失った。
翔の足が当たり倒れ込む時に肩を撃たれ倒れたボディガードが肩を庇いながら必死に立ち上がり、翔の身体を強く蹴り転がして下に居た王子・王女を急いで確認した。
顔と首が真っ赤に染まった王女を見て驚愕した顔をすると直ぐに撃ち抜かれた肩を気にもかけず、翔の横で床に倒れて首を振っているボディガードを大声で「ヨシム!」と叫んだ。
首を撃たれ血を噴き出して動かないボディガードを残し、撃たれた胸を押さえながら何とか立ち上がろうとしているもう一人を大声で怒鳴って呼び、三人で王子・王女を抱えるように大事にして優しく引っ張りながらも迅速に動き、皆が殺到している出口を見ると咄嗟に反対側のステージ脇の扉を蹴るようにして抜け通路へ出た。と同時に自分達の場所を示すアイコンシグナルを付け王族カーを呼び出した。
二台の王族カーがシグナルに応えて近づくのを腕のCPUで確認すると楽屋に機材を持ち込む出入口扉の方へ走り寄り、力いっぱい蹴り飛ばして近づく王族カーへ駆け寄って一気にドアを開けた。中へ王子と王女を押し込みながら自分も乗り込むと直ぐ走り出し、同時にもう一台にもボディガードが乗り込んで後に続きハイウエイへ走り込んだ。