さすがに高校の合唱コンクールともなると、すごい、の一言だ。その歌声に圧倒された。だが、その楽曲とコーラスは素人の俺にとって難しすぎる。何が正解かよくわからない。

「なつきたちはどうだった?」

弥生に聞いた。

「聞いていたでしょ? また寝てたの? すごく上手だったじゃない」

「上手だったのはわかる。わかるが、他の高校よりもか?」

「そうです」

「じゃあ、勝てるか?」

「それは……わかりません」

「お姉ちゃんたち、すごく上手だったよ。きっと勝てると思う」

みつきとはづきが答えてくた。

結果発表のときが来た。

「名古……」と高校名が全て発表される前に、なつきたちの歓声があがった。

「……やった。やった。すごい」

娘から感動をもらった。弥生も既に泣いていた。もう一校は、やはりライバル校だった。このライバル校の昨年の成果のおかげでチャンスを広げてもらった。そしてそのチャンスを実力で勝ち取ったのだ。

三年間、この日を目標に頑張って来た。朝早くから遠く離れた学校まで電車とバスを乗り継ぎ通って練習してきた。ライバル校とようやく肩を並べる事が出来たのだ。誇りに思っていい。この娘たちも、いずれこの日を皆で振り返るときが来るだろう。夢を叶えた、このかけがえのない出来事は一生の思い出となる。

そしてこの仲間たちは一生涯の宝ものになるだろう。おめでとう。よく頑張った。涙が流れた。

俺はどうだ……。高校時代は地区大会で敗戦、県大会にも出場することが出来なかったが、その仲間たちと今、再びの夢に向かっている。忘れものを取りにいこう。そう勇気をもらった一日だった。

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