正午になった。日差しもかなり強くなってきた。スクールの生徒たちとその親御さんたちでギャラリーが多かった。試合が始まった。すぐにスイッチが入り、すごいタックルが入った。激しいタックルを受けても芝がクッションとなりあまり痛くなかった。これなら思い切っていける。俺はそう思った。

十分でウォータータイムとなり、相手チームの俺たちにも子供たちが水を運んで来てくれた。嬉しかった。ノーサイドの精神だ。試合は大学OBの方々の活躍と若手三人の走りでよい試合になり、なんとか勝つことが出来た。貝沼もトライを決めていた。今回はケガ人も出なかった。

最初に声をかけてくれた大学OBの方が特によく走っていた。歳を聞いてびっくりした。六十歳だそうだ。頭が下がった。毎週日曜日はラグビーをしているとのこと。さすがに月一度の俺たちの練習ではかなわないと感じた。

「やっぱ。楽しいですね。トライしたり勝ったりすると」

と貝沼が言った。

「そうだな。本当に楽しいな」

俺も思った。OB戦とは違う緊張感がある。練習試合と言えど本気で対峙している。混合チームでも勝てば嬉しい。蟹クラブのメンバーで勝てばもっと嬉しいんだろうな。今日の試合は試合そのものよりも、現在のラグビーの環境を学んだ。そんな初夏の一日だった。

二〇〇七年秋

月一度の練習は行っていたが、やはりなかなかメンバーが集まらない状態だった。そして社会人クラブへ登録するのに必要な事項を探していた。会則の作成。役員の選定。いろいろなことが必要だった。皆、楽しく出来れば堅苦しいことはしたくなかったが、クラブ登録しないと試合もなかなか組めないのが現状だ。クラブとして正式に存在しないと、相手チームに対して迷惑になる。

グラウンドの使用やレフリーの依頼、ケガに対する対応などが必要な為だ。上床先輩と修三先輩の指導のもと、沖、平岩、直、田村、テーショーが中心になり、度重なる蟹クラブの役員会の開催、新ルールの講習会への参加、コーチ資格の取得など、社会人クラブへの登録申請等を行ってくれた。

皆、忙しい仕事の合間、そして休日をつぶして努力をしてくれた。

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