【前回の記事を読む】豊かな自然に囲まれて暮らす犬…毎朝の楽しみは「海辺の散歩」

さて、それはさておき、この家のご主人を見ていると、つくづく面白い人だと思う。先に述べたとおり、中学校で英語を教えている。そのせいか、時々自宅に外国の方々を招いてパーティー(宴会)を開いている。

吾輩はご主人と彼らが話している英語という言語はとんと分からぬが、家に招かれたアメリカ、イギリス、オーストラリアなどの人々も吾輩を「マック!」と呼んで、膝に乗せ、頭を撫でてくれる。

世界中には国籍を問わず犬好きな人々が多いものだと感心する。いや、ご主人がイギリスに留学した時に驚いたことの一つは、人間と一緒に犬がバスに乗り込んできたことらしいので、外国には日本人以上に犬好きの国民がいるのだろう。

それに、ご主人は多趣味である。ご主人は、以前読んだ「人間同士の社交では、音楽、文学、演劇といったような幅広い人間的な関心をともに人生に向けることから成り立つ。……人生を勤めとしか思えない人間は、さびしい。自分の人生を楽しむことができない人間は、他人の人生について楽しもうとしない。自己を持っていない者は、他人を尊重できない。自分を粗末にしては、他人を大切にできない」というユダヤ人の宗教指導者が書いた本の一節に感化されたらしい。

そのせいか、ご主人の趣味は、陶磁器鑑賞、音楽鑑賞、絵画鑑賞、バレエ鑑賞と幅広い。陶磁器は、主に中国の古い陶磁器と現代日本の陶磁器を鑑賞し、尚且つ収集しているようである。テレビ番組の『開運! なんでも鑑定団』にスタジオ出演したぐらいだから筋金入りのコレクターである。

テレビ出演の時に鑑定してもらったのは、中国人の友人から四万円で譲ってもらった直径十八センチメートルほどの白磁の鉢であった。

鑑定結果は、鑑定士である中島誠之助さんが「実にいい仕事してますね~。今から約九五〇年前、中国の北宋時代に作られた定窯の白磁に間違いありませんね~。……白い磁体に刻花の技法で一気に彫られた蓮の花が実に見事ですね~。北方民族のピーンと張りつめた緊張感が伝わってきます。貴重な名品です。大切に後世に伝えてください」とべた褒めで三五〇万円の価格がついた。

「棚から牡丹餅」とは、まさにこのことである。ご主人は天性の「運の良さ」を持っているようだ。ご主人は、その後知人友人たちとの会話でこの話題が出る度に「人生長生きすれば、時にはいいことがあるね~」などと呑気に言っている。