エッセイ 『炎の職人』 【新連載】 桂 敏明 大学を中退し、親の金で生きていた22歳…ある日、新聞の「3行広告」に釣られて電話を掛けてしまった。「今から来られますか?」と呼び出され… 二十二歳の時、偶然目にした新聞広告に導かれてバイオリン職人を目指し、文京区にある弦楽器専門店で十年余りの修業後、独立し杉並区西荻窪に自分の工房を開きました。幸いお客様や弟子にも恵まれ、今まで職人として工房を続けることができています。六十六歳になって心臓の手術を受け、直後に脳梗塞を発症し、障がい者となった時、これまでバイオリンと共に歩んできた年月を、改めて自分の言葉で振り返ってみたい――そう思った…
小説 『差出人は知れず』 【第35回】 黒瀬 裕貴 「女の子ひとり抱えられねぇのか」――火事の中、孫を見つけた祖父。しかし老いた体はすでに限界で…… 【前回記事を読む】真冬の夜、汗だくで戻った老人が見た“変わり果てた我が家”――妻と孫はまだ中に? 次の瞬間、彼は迷わず……全身濡れネズミとなった良三は「待ってろ若菜、千代」と呟き、水を止める。それから防塵マスクと飛行眼鏡を装着したのちに玄関を蹴破るように開け放った。それは気合を入れるためか、はたまた景気付けか。再び姿を現した良三に山城は目をひん剥いて驚いている。「良ちゃん、その恰好……馬鹿なこと…