【前回の記事を読む】ジョン・レノンの魅力「ポップ・ミュージックをやりながらブラック・ジョークも」

2-2 With The Beatles

『アイ・ウォナ・ビー・ユア・マン』

ポールが、リンゴがドラムを叩き歌うところをイメージし作った曲。けれど、ローリング・ストーンズのミック・ジャガーから曲のオファーを受け、この曲を提供。本作リリース前に、ローリング・ストーンズがシングル曲としリリースしたため、実質セルフ・カバーとしてリリースすることになるのでした。

「良い曲を他人に譲るわけないだろう」

ジョンはことの経緯をそう語っています。

リンゴがメインで歌う曲ですが、サビでタイトルを連呼する見せ場の部分では、ジョンとポールが歌っています。(黄盤収録)

このアルバムでも素晴らしいカバー曲をいくつも収録しています。

メレディス・ウィルソンの『ティル・ゼア・ウォズ・ユー』では、ミュージカルなどで歌われる曲を、ロックンロール・バンドとしてのジャズ・スタイルでカバー。リンゴが叩くキューバの民族楽器、ボンゴが、曲のイメージを柔らかくし、ジョージのガット・ギターでの美しすぎるソロは完璧です。

『プリーズ・ミスター・ポストマン』は、マーヴェレッツのカバー曲ですが、ビートルズのオリジナルと思われるほどの人気曲となります。終始テンションを上げている、ジョンのしゃがれた声が最高な一曲。

そしてチャック・ベリーのカバーで、ジョージが歌う『ロール・オーバー・ベートーヴェン』このアルバムのカバー曲は、それぞれが持参したレコードから、カバーしたい曲を選んでいるのです。ビートルズ全員がチャック・ベリーのファンなので、相当気合いを入れて挑んだことでしょう。

ジョンは

「もしこの世にロックンロールという言葉がなければ、チャック・ベリーと呼んでいただろう」

そう語っているほどです。―自分の歌でレコーディングしたかったでしょうね。

アメリカでは『ウィズ・ザ・ビートルズ』リリースの二ヶ月後『ミート・ザ・ビートルズ』とし、収録曲を一部変更してリリースされています。

その中のシングルアイ・ウォント・トゥ・ホールド・ユア・ハンド=抱きしめたい』は、アメリカのビルボードで一位を獲得。ビートルズがイギリスのみならず、世界に羽ばたいた瞬間だったのです。

一九八〇年の雑誌インタビューで

「当時ポールと正面から向き合いたくさんの曲を書いた。この曲もそうだ。ポールがピアノで弾いたフレーズを今のをもう一度!ってね」

九十六年にポールは、

「正面から向き合ってというのは的を射た説明だ。この曲は二人の共作なんだ」

そう語っています。個人で曲作りをする後々のビートルズを知る人なら、ちょっと感動ですね。ジョンの、リッケンバッカーによる複雑なカッティング技術もそうですが、個人的には、普段ポールが担当するような高いキーのパートを、ジョンが裏声で担当しているのが魅力的です。そして、ビートルズのハンド・クラップを用いた代表曲と言っていいでしょう。

ちなみに、ビートルズ初の四トラック・レコーディングで、日本でも最初にリリースされたビートルズのレコードです。(赤盤収録済)

この曲のB面には『ジス・ボーイ』を収録。アコースティック(J‒160E)をメインにしたスロー・バラードで、それぞれが違うキーを歌う、ジョン、ポール、ジョージのハーモニーが魅力的です。歌詞ではなく、メロディと演奏を大事にしたジョンの曲“こんな曲も書けるんだ”と思われた最初の曲ですね。(黄盤収録)