二部 高倉豊、警視庁に合流
「二十年前の事件は?」高倉豊は尋ねた。
「店が閉店して、誰も居なくなってから金庫が破られた。従業員には全員話を聞いてあった。もちろん、中原純子にもだ。疑いを持つような、態度ではなかったようだ。その前の事件のときも、全くのノーマークだった。神奈川県と東京での、時を隔てた事件ということで気付けなかった。言い訳にしかならないが」
「それだと強盗団は四人だということですか。二十六年前の強盗事件に関しては、中原純子が手引きしたということで」
「私はそう考えている。古賀と黒沢が三人組のうちの二人だ。金庫破りに関しては、防犯カメラの映像がないから何とも言えない。ただ金庫自体は、4桁の数字を入力すれば開く、比較的簡単なものだったから、素人でも解除出来る」
「じゃあ、残りの一人も同じ目に遭うということですか」
「彼岸花の毒を選んでいる時点で、殺そうとしているとは思えない。普通は戻してしまうことが多いからだ。だが、中原純子に対しては首を絞めている。おそらく彼女にだけは、恨みが強かったんだろう。運良く死は免れたが、今も意識不明の重体ということのようだな。次に起きる犯罪を阻止しなければならない。
とは言っても、強盗の件でも金庫破りの件でも、高倉君が言うように、公訴時効が成立してしまっているから捜査は出来ない。中原純子の絞殺未遂と古賀と黒沢の毒殺未遂に関しても、強行犯捜査2係に普通は捜査の権限はない。今回は特別措置だ。おおっぴらな捜査は出来ないので、高倉君だけを貸してくれるように夏川さんに頼んだ。うちのタナカ巡査部長と組んでもらうことになる。
もちろん警察庁には、承諾を得ている。実は二十年前の事件は、私の友人が経営している、ホームセンターで起きたものなんだ。そういうこともあって、何としても次の犯罪を阻止したいんだ。たとえ古賀と黒沢に昔の犯罪を認めさせることが出来なくてもな」