流儀一 発想を変えよう

03「年収の10 倍」という借り入れ限度額を目一杯使う

サラリーマンなら借入額は年収の10倍まで

では一棟物件の大家さんをめざすには、どんなことに気をつければいいのか。まず大切なのは一般のサラリーマンが銀行などからお金を借りるときの限度額をどう利用するかだ。

この限度額を借入枠と呼ぶこともあるが、これは人によって違うし、銀行によっても違う。また何に使うかによっても違うので正確に「いくら」というわけにはいかない。

だが不動産を購入するために借りる場合、サラリーマンで年収の10倍がひとつの目安だと言われている。つまり年収400万円なら約4000万円ということになる。

借入枠を自宅の購入につかってしまっては損

4000万円というと私の地元である大阪、堺あたりでも、そこそこ立派な新築マンションが買える。頭金を貯めれば新築一戸建ても夢ではない。東京近郊でも、都心をのぞけば同じようなものだろう。

しかし、ここで自分の住む家の購入のためにこの4000万円の借入枠をつかいきってしまうのは惜しい。

この4000万円の枠は、自分の家を買うためではなく、賃貸用の一棟物件を買うために目一杯つかう。これが大家さんになるための賢いやり方だ。

自分の家のために組んだローンは、サラリーマンなら自分の給料から返済するしかない。だから目一杯借りてしまえば、それ以上借りることは難しい。

しかし賃貸用の一棟物件のために借りたお金の返済には家賃をあてることができる。毎月入ってくる家賃で銀行などの金融機関から借りたお金を着実に返していけば、借入金が減っていく一方で、あなたの大家さんとしての信用度が増していくのだ。

「大家さん」業として認められれば借入額は物件次第

つまり大家さんとして一歩を踏み出すには、まずサラリーマンのかたわら事業として大家さんをめざしていると銀行に認められることが重要なのだ。

それには、まずは4000万円の借入枠を活用して一棟物件の賃貸住宅を購入し、店子(賃借人)から入る賃料で着実に返済を続け、実績をつくっていくことが大切だ。

そうすれば「つぎの物件」は意外に早くやってくる。というのも、あなたが大家さんと認められるかどうかの明確な基準のようなものはなく、「つぎの物件」へ銀行が融資してくれるかどうかは、まずはあなたの返済実績が大きくものをいうからだ。

あとは「大家さんをやりたい」というあなたの熱意を具体的にどれだけ銀行の担当者にアピールできるかにかかっているといってもいい。

所有物件の規模が増えると限度がなくなる

あなたの返済実績と大家さん業にかける熱意が認められれば、借入金の枠は拡大され、限度額は物件の善し悪しにかかってくる。さらに、あなたの努力が実を結んで、金融機関からりっぱな大家さんとして認知されると、借用枠は事実上なくなる。

ここまでくると銀行が融資するかどうかは、あなたの信用というより、これからあなたが購入したり、建築したりしようとしている賃貸住宅が事業として成り立つかどうかにかかってくる。

もう少し具体的にいえば、その賃貸住宅から入ってくる家賃収入で、きちんと銀行からの借入金を返済できるかが、判断基準になってくるというわけだ。したがってこの条件を満たせば、原則的には何軒でも賃貸住宅をもてることになる。

銀行との交渉は不動産業者を通じてやるから安心

こう書くと、大家さんになるためには、お金を借りるために銀行相手の難しい交渉をしなければいけないと思う人もいるかもしれない。だが、そんな心配は無用だ。

銀行との交渉は直接あなたがやるのではないからだ。あなたが購入しようとしている賃貸住宅の販売を手がけている不動産会社は、提携している銀行があり、細かな交渉事は不動産会社と銀行の間でやってくれると考えていい。

とくに最初の1軒を購入するときは、一般のサラリーマンがマイホームを買うときとほとんど変わらない。必要な書類や証明書などは不動産会社がていねいに教えてくれる。

違いといえば賃貸住宅を購入する場合は、住宅ローンではなく事業用のローンになるから、金利が少し高くなるほか、返済期間が短いことぐらいだ。