核心2
7 プランのつくり方
理想的なプランは全戸角部屋
日の当たる部屋や風通しの良い部屋は入居者が求める最大のニーズといえる。私のプランは物件の真ん中を十字に切ることから始まり、中心部に廊下や階段などの共用部を配置し、建物の核となるコアをつくることからスタートする(図1)。
これはアパートやマンション、住宅の場合も一緒で建物の中央に十字の線を入れることで4つの端(角)部屋ができる。朝日が入る方向を確認し、どう採光窓を取っていくのか、バルコニーの位置などを決める。
一般的に見かけるアパートは、いわゆる部屋を横に並べた「ようかん型」がほとんどだ。なぜ角部屋プランにこだわるのかというと、ひとつは採光窓と通風窓が取りやすいこと、隣部屋の音や騒音などの問題も、ある程度防ぐことができること。独立感でいうと、やはり端部屋の人気があることだ。家賃アップも見込まれる。
「ようかん型」の欠点と角部屋プランの利点
「ようかん型」のアパートはコストが安くて建設しやすいので、ハウスメーカーなどが得意としている構造だ。別項目でも紹介したが、「ようかん型」の利点は、南向きの土地であれば全ての部屋に南向きのバルコニーがつくれること。
一方でデメリットは、部屋の玄関や共用部である通路の廊下や階段が外部と接しているため、汚れやすくまた、壊れやすいこと。錆びなどが出て、見た目や印象が悪くなる。錆びた階段は誰が補修するのか? 専門業者に頼めば費用も掛かる。
こまめなオーナーなら自分でペンキを塗ったりする人もいるが、いずれもお金と時間を掛けなければきれいにならない。共用部の片廊下なども問題が山積みだ。まめなメンテナンスと共用スペースの掃除などは必須で、錆びなどで見栄えが悪いと入居者が決まらないなど悪循環も生まれる。
これに対し、角部屋プランは室内に部屋までの導線があることで雨風を防ぐことができ、自転車なども室内に置ける。廊下や階段などの共用部を箱の中に持ってくると、20〜30年たっても錆びないし、きれいである。長い目で見れば角部屋タイプがいいことが必然的に分かるはずだ。
住宅プランは家族の顔を思い浮かべて考える
朝日の方向など何も考えずにプランを勧めてくる設計士も中にはいるので、注意が必要だ。住宅なら基本は朝日が入る方向を確認して、寝室やリビングの位置や玄関の場所を決める。室内の階段はマンションと一緒で、中央付近に家族のみんなが顔を合わせるようなところを想像して穴埋めしていけば、十分にいいプランができるはずだ。
説明を怠る設計士も数多い。家を建てるときは必ず設計士に「朝日はどちらから入るんですか」と尋ね、「寝室とリビングに朝日を入れてください」とお願いする。「朝日がどこから入る?」これがキーワードだ。
出入口は朝日の位置を考えて
出入り口の位置については、角部屋を意識したプランをつくってもらいたい。建物に朝日が当たる方向に通路をつくるというのが基本の考えで、共用部の出入口は南東から入る朝日を考えて配置する。
北に道路がある北向きのアパートは南東に、西に道路がある物件はコア部分を道路に沿って縦に配置し、南に出入口を持ってくれば共用部分が明るく開放的になる(図2)。角部屋プランは入居者同士の声や騒音などによる近隣トラブルが少なくなるというメリットもある。
採光と通風で家賃収入も変わってくる
角部屋プランは採光や通風で、どの部屋も同じような条件を満たしているが、「ようかん型」は部屋と部屋を仕切る「界壁」に挟まれた部屋が存在し、採光や通風の関係で条件が落ちるため、家賃を下げなければ入居者を納得させられない。
角部屋プランは「界壁」を極力減らすことができるのが大きなメリットで、何より光と風の通り道がたくさんある(図3)。中古物件を買う時は、こうした考えをプランに盛り込んでいるかというところに注目してもらえればいいと思う。
心構えは快適な居住空間の提供
安い家賃を求めて賃貸物件を探す人は多いが、大家やオーナーとして、または物件を建てる側の供給側にいる立場としては「快適な居住空間で住んでいただきたい」という思いを持ち続けてほしいし、そうしたプランをつくる努力が必要だ。
住む人たちが住みやすいアパートやマンションを供給することが、私たちの仕事だというところを忘れてはならない。大手などは、いまだに「ようかん型」だが、Machidaでは、極力、角部屋プランを提案していきたいと思っている。私たちを真似したような物件が増えているのも事実。賃貸業界が私たちが提案するプランの方向に流れている。