【前回の記事を読む】45歳でこの世を去った「ジョルジュ・ドン」がいかに凄かったか…
「ベジャール&ジョルジュ・ドン」
図書館に注文していた『ダンスマガジン2002年3月号〈ベジャールとジョルジュ・ドン〉』が届いたので読みふけっている。
これまでの一途な熱気は消し飛び、絶望的な気分になり、このひとかたまりの研究を一切投げ出してやめてしまいたくもなった。ストレッチもせず寝床に入った。あまりにも優れたドンとベジャールについて、私が研究するなんておこがましすぎる、と自己嫌悪に陥ったのだ。
だが、またすぐ気分は元に戻った。
ドンは、4歳からずっと踊り続けた。先日、ドンが少年時代に主役を踊ったダンスの映像を見た。ベジャールも子供時代からすでに才能を発揮し、古今東西の文化や芸術を学びながら、振付師として20世紀を代表する、偉大な舞台の数々を作り続けた鬼才だ。
朝、『ボレロ』のレッスンをした。毎朝、YouTubeを開くとダンスをしているドンがどこかにいるが、そうではなくドンのスナップに会いたい。私が購入した雑誌のほとんどはドンの特集だから、スマホのカメラで写して、スマホの中に保存しておけばいい、と気付いた。
団地内の写真館に、ドンの作品のVHSを3枚のDVDに焼き直してもらっている。もうすぐできあがってくるだろう。何かとても心ウキウキしている。近年珍しい心理状態だ。
“ドン漬け”の毎日だが、朝、カフェに入り、コーヒーを待っている間、大きく手を広げて踊りたくなったのだ。これには我ながら驚いた。こんなことはもうずっとなかったから。
朝、感じていた気分は、私の心の宝物のことだ。“ドンについての研究”は、現在の私の日常に、はかりしれない豊かさを与えてくれている。今、行きたいところはベルギーのブリュッセル(20世紀バレエ団の元本拠地)とスイスのローザンヌ(現在のベジャール・バレエ・ローザンヌがありドンが亡くなった場所)、アルゼンチンのブエノスアイレス(ドンの生地)。