再会の瞬間、祖母は膨らんだおなかを凝視した。動物園で檻越しに動物を眺めるような視線。二秒後、動揺が露わになった。孫への愛情と、この社会で規格外なことの間で揺れてる? 工場でよく聞いた言葉、キカクガイ。いつも悪い意味。でも、孫は大事だよね?
期待外れだと一秒後に理解した。孫が来た理由を悟っても、「結婚した話は聞いてない」が、最初の言葉だった。
「なんもせんで困ったときだけ頼る」
セケンの口だけがこの人の生きる基準。そんな人たちだけのコミュニティには不道徳や犯罪なんてないんだろな。
「お母さんにはゆったんか」
まわりに人がいないかを気にして見回している。この辺は全員がお互いに顔見知り。だからと言って玄関引き戸の中に入れてくれたりはしない。
「うん、ママにはゆった。でも」
おなかが余計に恥ずかしくなり、両腕をおなかの前でクロスさせるために荷物を持ち替えた。
「えと、再婚したし」
「ママ、か」
鼻を鳴らした。
「ここは街と違うからな」
平らな抑揚。もしかしたら、義務だけの毎日が、何世代も続くくらい長いと、感受性のひだが平らになってしまうことがあるのかも。
「街の人は自分勝手でもいいかもしれん。強欲のまんま」
欲? 違うと思うけどな。自己肯定、ポジティブ、前向き、努力家、サバイバルに勝つ人。
ナオミにはわからない。