【前回の記事を読む】別称「微笑みの障害」実は見落とされがちな聴覚障害の事情とは

聴覚障害について

14 難聴あるある話

以前は不勉強で、難聴の友人に後ろから「ねぇねぇ」と声をかければ振り向いてくれるため、つい聞こえづらい事を忘れて話し始めてしまったという話をすると、アリコさんは

「まさにそれやねん。ついペラペラ喋ってまうけど、途中から話が通じてへん事に気がつくねん。忘れてまうねん」

と言いました。別の難聴の方は、家族が大きく口を開けて話してくれるのは嬉しいけれど、大口を開けると自然と目まで大きく開くので、間近で話をされるとホラー映画みたいだと教えてくれました。難聴ではありませんが、アリコさんは一対一ならば問題が無いけれど、大勢の中では人の話がわかりづらいそうです。

これはもしかすると、聞こえているのに聞き取れないというAPD(聴覚情報処理障害)かもしれません。この話を配信した後に、自分もそうだというご意見をいただきました。

難しい話を聞いていると頭が疲れて人の話が入ってこない、というのとは少し違うようで、アリコさんは昔からそうなのだと言いました。私たちは、聞こえ方には人それぞれ違いがあり、苦手な状況があると知っておくのは大事な事だと思います。

以前私は、要約筆記者も手話通訳者もいない状態で、難聴の人がいる小さなミーティングに出ました。少しでも役立てばとホワイトボードに「今から話し合う内容」や「誰が」「言った」という内容を板書しました。苦肉の策ではありましたが、全体としていつもより議題から反れる事なく、話す人たちみんなが要点を押さえて話をしてくれたので、効率的な話し合いができました。

いかに私たちが無駄話で聴覚障害者を疲れさせているかを反省した出来事でした。この話をした時に、アリコさんは以前、フランス人と英語で会話をした時に、互いに拙い英語しか話せなかったけれど、シンプルな文章を紙に書きながら話をしたら、思いのほか通じて嬉しかった時に似ていると言いました。いきなりフランス人の話に飛ぶなんて、アリコさんらしい。

小学校で講座をする際には

「お話をする時に大きな口を開けてハッキリと話すだけで、UDな人に一歩近づくよ」

と伝えます。気を付けて丁寧に要点を話すというのは、難聴者だけでなく誰に対しても親切で、頭が良さそうに見えるので、常日頃から心がけたいですね。