15 耳の不自由なFさんをお招きして
障害のある当事者の話を直接お届けする事が大切だと常々思っているので、この回は、ゲストとして中途で難聴になったFさんに参加してもらいました。耳の不自由なFさんに私たちの会話内容をわかりやすく届けるため、この回では、アリコさんと私が交代でタイピングをして文字化しました。
Fさんは現在、在住の町議会の傍聴席を、車いす利用者や聴覚障害者などが気軽に傍聴できるよう、請願する活動をしています。素晴らしい活動の話なのですが、アリコさんはそこに反応する事なく、自分のお父様のための質問をしました。
何歳から聞こえなくなったのか、補聴器を使うようになって何が違ってきたのか、今はどう聞こえているのか、音楽を楽しむ事はできるのかと矢継ぎ早です(タイピングが追い付かず涙)。答えるFさんは、こちらの事情がわかっているので、ゆっくりと話します。
58歳で急激に聞こえにくさが強くなり、補聴器を使うと音は聞こえるようになったけれど単語などはうまく聞き取る事ができない事、補聴器を長時間付けていると頭が痛くなる時もある事、そして、音は全部1つの音階でしか聞こえていないと話してくれました。
質問者を交代し、私からはFさんに、伝えたい大事な事を1つ話してくださいとお願いしたところ、迷った末に、
「聞こえ方や症状は人それぞれ違う事をきちんと知って対応してほしい。私が一番やってほしくないのは耳元で大きな声で『聞こえるかーい』とやる事です」
と言いました。補聴器を付けている時にそれをやられると、頭が割れそうなほど大きな音で耳に入って、その上に音が割れて、かえって聞き取りにくくなるそうです。そしてFさんは、話し合いなどがエキサイトしてきた時でも、
「もう少しゆっくりお願いします」
と言い出しやすい雰囲気を作ってほしいと言いました。それからアリコさんは困ったように、
「私の父は、他の人に比べたらお前の声は聞こえにくいと言うんやけど、どうしたらええでしょうか?」
と聞きました。すかさずFさんは、
「きれいな声は聞こえにくいんですよ」
なんて冗談を言った後、甲高い声が聞こえづらい人は多いようです、いつもよりトーンを下げてソフトな声を意識して話すといいと思いますと教えてくれました。