しかし、それもよくよく考えたら至極当然の事です。例えば現在、少子高齢化によって国の社会保障費が増大し、毎年二十三兆円の国債を発行し続けなければならなかったとします。そこで、政府がその補填のために消費税を増税し、その時の財政の帳尻がそれで一旦合ったとしても、十年後、少子高齢化が更に進み、再び国の予算が十兆円足らなくなる……。財務省は、こんな事が起こるたびに、これから先ずっと永遠に消費税を上げ続けるつもりなのでしょうか? 

結局、日本の財政が悪いのは、困ったらその時にその原因をきちんと解決する事を避け、安易に消費税増税に頼ってきた事に原因があるのです。ハッキリいって、財務省が提案している緊縮財政では、悪化し続ける日本の財政を再建する事は絶対にできません。そもそも財務省が国民にいつもいっている、

「財政の健全化と安心できる社会福祉のためには、消費税の増税は必要不可欠な事である」

という話すら、実は真っ赤なウソなのです。

私は、日本の多くの経済学者がいっているような「日本の財政は絶対に破綻しない」という説(MMT現代貨幣理論)を全く信用していません。また、自分の事をれっきとした財政再建論者だとも思っています。

しかし、それでは財務省がいっているように、財政再建をするためには、政府はもっと強く緊縮財政を推し進めなければならないのかといえば、それについても全く同意していません。しかも、当の財務省の官僚や麻生太郎氏ですら、緊縮財政では国の財政は再建できない事を、本当は彼らもわかっているのです。

彼らの本音は、何をやったらこの多すぎる借金の返済のメドが立つのか全く見当がつかず、とりあえず緊縮財政を行う事で、これ以上日本の財政を少しでも悪化させないようにする事しか、もはや今の彼らにはできないという事なのです。それは、「日本の財政は絶対に破綻しない」と唱える知識人も同じです。生粋のMMT論者は別として、彼らも本当はこの多すぎる財政赤字に対して、どう対処して良いのか全く見当がつかないのです。

しかしながら現在の深刻な経済恐慌に対しても、けっして放置してはおけない状況も自覚しています。そこで彼ら自身も「日本の財政は絶対に破綻しない」というMMT理論にすがるしかなかったのです。しかし長年、会社経営をしてきた者として、ここでハッキリいわせてもらえば「いくら借金をしても、政府は絶対に財政破綻(デフォルト)しない」なんて都合のいい話、この世に存在するはずがありません。