【前回の記事を読む】「日本文化を学ぶため…」内向的だった男が合気道を志したキッカケ
第二章 沖ヨガ創始者の沖 正弘先生との出会い
本当の求道者であり、道を究めた天才とも言える沖 正弘先生の「求道」ということを考えてみようと思います。そこに人生を求める人々への解答があると思えるからです。
その前に私が沖先生を知り得たきっかけを書いておこうと思います。
合気道の稽古を始めてから何年経った頃かははっきり覚えていないのですが、新宿の紀伊國屋書店の1階を歩いていたら高校時代からの友人である上嶋君(後に日本綜合ヨガ協会の会長になる)に偶然出会ったのです。
しかし、考えればこれは単なる偶然ではく、心理学者ユングの言うシンクロニシティであったろうと思います。
上嶋君とは何故か気が合って高校時代はよく話していました。彼は優秀で慶応大学に進んだことは知っていましたが高校卒業以来交渉はなく、久し振りの再会でした。
私の自宅が紀伊國屋書店からほど近い場所にあったので、わが家で旧交を温めることになったのです。家に着くなり「井上君、素晴らしい凄い人がいるんだ。『沖 正弘』と言う方でともかく凄い!」と言う。
「フ~ン、何が……?」
「ヨガを教える方だ。」
その時初めて「ヨガ」と言う言葉を聞いたのです。
「沖先生の講習会があるから一緒に行かないか。」と誘われ、怪しげだと思いながらも行くことにしたのは今から思えば大正解でした。もしあの時に沖先生に出会わなかったら私の人生は大きな損をしたと思うのです。
後日、山手線の鶯谷駅で待ち合わせ、近くの鍼灸院へ向かいました。そこの2階が講習会場でした。受付には、真面目な感じの男性のスタッフの方(石川先生)がいて会場の人数は10数名ほどでしょうか。黒ないし紺のスーツを着た細身の眼の鋭い感じの方が見えました。この方が沖 正弘先生でした。
講話は「ヨガとは何か」というものだったと思います。その中で私が覚えているのは、人生では真理を求めること即ち「求道」(沖先生はグドウと呼ばれていた)が大切ですという事でした。
「しかし、真理を求めてもそれを実行しなければ意味がありません。すなわち求道と実行は一緒に行わなければ意味がないのです。いくら良いことを聞いても実行しなければ駄目なのです」と言われていました。
この時に初めて「求道」という言葉をはっきり認識したのでした。私のやっていること求めていることは「求道」なのだなと思ったのです。
そして真理を求めて本を読んでばかりいても良いことを実行しなければ、つまり「行」が伴わなければ駄目なのだと改めて感じたのでした。