子供はいいものだ。一気に距離が縮んだような気がした彼だった。翌日は日曜日で軍の事務方も出勤はしていないという。緊急ではないので連絡は控えた。そうすると何もすることがない二人である。ヒョナは市場が休みなので店を手伝うし、ホンギは友人と魚釣りの約束をしていて案内はできない。

『今日は仲良く松島にでも行って海を見ながらブラブラするといい』と言われたので、地図を描いてもらい出かけることにした。

店長のシギョンが平日が無理なら日曜日、サンマンの同行でもОKと言ってくれたので、ユジンはサンマンを連れて食事の誘いを受けることにした。その日の朝は四月下旬にしては元気のよいお日様だった。半袖で十分の陽気に上着を片手に持ち、サンマンと手を繋いで外へ出た。近くのバス停に彼(シギョン)はすでに待っていてくれて

「コンニチハ。サンマン君。私はシギョンといいます。ママの友達です。ヨロシク」

サンマンは背の高いシギョンを仰ぎ見て元気に

『ハイ!』

と返事をした。

「ユジンさん、今日はこんなに良い天気なので海を見ながらお昼にしませんか? どうかな、サンマン君?」

「オッケー」と指で丸をしたサンマンはチラッとユジンを見た。ユジンは優しく片目を閉じて返した。この時、松島の海岸に弘とすずがいた。あまりの暑さに弘は上半身を剥き出しにし、二人で沖を眺めている。

『この先に私たちの住んでいた益田があるのね』

などとつぶやきながら。シギョンら三人はサンマンを挟んで手を繋ぎ、海岸を歩きながら店を物色中だ。ふとユジンが男女の後ろ姿に目をやる。

『うん? 武さんと同じ右肩の下に痣があるわ。こんなこともあるのね』

「ママ、どうかした?」

「アッ、いえ、何でもないのよ。チョッと知り合いかなと思っただけ。違ったわ。行きましょう。何食べよっか」

人は慌てると早口になるものだ。

「ユジンさん、あそこ良くないですか? 大きな魚の看板のお店です」とシギョン。

「良さそうだけど高くない?」

シギョンは胸に手を当てて

「おまかせください。お姫様。王子様」

「やったーっ。シギョンさん早く行こ行こ」

サンマンははしゃいで見せた。

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