小説 『曽我兄弟より熱を込めて』 【最終回】 坂口 螢火 用意した死に装束を、我が子に着せる。まだこんなに小さいのに、斬首だなんて…私が身代わりになって死にたい! 青天の霹靂とは、まさにこのこと。聞いた母の驚きは尋常のものではない。「エ――エッ! 何と、何とおっしゃいます!」声さえ別人のごとく裏返って、「厭です! 厭です! 渡しません、断じて……」絶望的な悲鳴を上げ、曽我太郎に取りすがって泣きわめいた。その母の絶叫に驚いて、一萬と箱王が「母上! いかがなさいました」と座敷に駆け込んでくる。「オオ――一萬、箱王」母は無我夢中で二人を左右にかき抱くと、黒髪を振…
小説 『残念ながら俺は嘘つきだよ[人気連載ピックアップ]』 【第7回】 二本松 海奈 「この俳優かっこいいよね」と言った瞬間だった。彼が「他の男を褒めんじゃねえよ」と私の頬をはたき… 【前回記事を読む】「恋人を探すために来たんですか?」その言葉に凍り付いた――仕事を貰うため来た異業種交流会。そこで、初対面の男性に…「他の男を褒めんじゃねえよ」そう言って当時28歳の結愛を殴ったのは、その時付き合っていたパティシエの彼氏だ。一緒にドラマを見ていて、結愛が「この俳優ってかっこいいよね」と何気なく言った瞬間、耳がキーンと鳴り、視界に火花が散った。頬を強くはたかれたのだ。「城山さんって…