はじめに
2020年初頭に始まった新型コロナウィルスのパンデミックは、あなたにどのような影響を与えましたか?
ひとりでいる時間が増えて孤独を感じたり、仕事が激減、またはなくなってしまったり……。遠くの家族ともう2年近くも会っていない、という方もいらっしゃるかもしれません。ビフォーコロナでは当たり前だった「またすぐに会える」が、パンデミックによって当たり前ではなくなってしまいました。
私にも会いたい人がたくさんいます。世界を旅して出会ってきた子どもたちです。
2020年4月に日本で発出された11回目の緊急事態宣言をきっかけに時間をもらった私は、これまでに出会ってきた子どもたちの写真を1枚1枚、ふり返りました。すると、そのときの温度、風の匂い、音、彼らの髪をなでた感触、彼ら一人ひとりの声、出会った瞬間の気持ち、そんなすべてがありありと蘇ってきたのです。
私は彼らの写真を前に、再会を誓うショートメッセージを綴りました。それを抜粋してまとめたのが、この写真集です。
子どもたちとの出会いはいつも偶然でした。たまたま声をかけたり、かけられたり、目が合って笑顔をくれたり、そんな通りすがりのものばかり。一緒に過ごした時間はさまざまで、ほんの数分間だけの子もいれば、そのまま村に住みついて家族のようになった子どもたちもいます。それでも過ごした時間にかかわらず、また会いたいという想いの大きさは同じです。
あなたにも、会いたい方はいらっしゃいますか?
もしもいらっしゃるなら、その気持ちを重ねながら、ページをめくってみてください。あなたの心を温かいなにかで包み込むことができれば、それほどに喜ばしいことはありません。
会いたいと願う気持ちこそが「愛」であると、私は思っています。
2021年初冬 写真家 MiNORU OBARA