【前回の記事を読む】「遠慮だろうと決めつけてしまった」視覚障害がある人が電車で座らなかった理由
カラーユニバーサルデザインなどについて
色の感じ方は、同じようでいて実はそうではありません。一部の人には見えづらい色というものがあります。以前はこれを「色盲」や「色弱」と呼んでいましたが、現在では「色覚特性」とか「色覚多様性」と呼びます。
アリコさんに、「いつまでも『色盲・色弱』と言っていたら、いつの時代の人? と言われてしまうよ」と話すと、アリコさんは、「教えてください! 色盲時代の人なんです」と言いました。
言葉遣い一つで差別に繋がる可能性があるので、敏感でいたいですね。
昔は学校で色覚検査がありましたが今は行いません。先生もクラスの中にいる色覚特性のある生徒に気づく事は難しいでしょう。しかし男性では5%の確率でいると言われているので、男子児童が20人いれば1人はいる事になります。
目立たせようと赤い色で強調したものが、グレーに見えているかもしれません。教材には、地図帳など色分けで表現されている物も多いので、プリントやチラシを作る時には、配慮が必要です。
また、加齢により徐々に色彩感覚は鈍ってくるらしいので、今見えている色は、若い人や昔の自分が見ていた色とは違うかもしれません。
そこでお勧めしたいのが、様々な見え方を体験できる無料アプリです。「色のシミュレータ」というのもその一つ。ぜひアプリを使って、印刷物や黒板がどう見えているのかを確認してみてください。もしわかりにくいと感じたら、枠で囲んだり、線を一点鎖線や二重線に代えたりして、色に頼らない工夫をしてみましょう。
UDな商品と言えば、「真っ黒のまな板」や「黒い包丁」があります。白いまな板に白っぽい食材では確かに危険です。もう少し年を取ったら、私も使ってみようと思います。
アリコさんは、「私もイベントのチラシは、このアプリでチェックしないとね」と言いました。チラシを作る時は、色だけでなく、外国人のために漢字にルビを振る事も必要です。やりすぎると逆に混乱しますが、彼女は常に前向きで凄いなと思います。
ある本には、同じような靴下を間違えて履いてしまう子、お絵かきの時に顔を緑色に描いてしまった子の親御さんの話が書かれていました。ちなみに現在は肌色という言葉を使わないそうです。確かに肌の色は千差万別。知らない間に私も差別的な言葉を使っていました。知識はアップデートしなければ。
こんな話をしていると、アリコさんが突如思い出したように話し始めました。
「子どもの頃の写生の時間に、紫で顔を塗る子がいてみんなで驚いたん。もしや彼は天才芸術家やったんか、それとも色覚に他の人とは違うものがあったんかわからへん。せやけどみんなからの指摘で彼が一番驚いたんかも」
文部科学省は「不必要な職業差別をしてはいけない」と発信していますが、それでも就けない職業というのは相変わらずあります。警察官、自衛官、消防士、パイロット、鉄道運転士、航海士が代表的なものです。
確かに色を読み取らなければならない仕事はあるので、これは差別ではないのでしょう。色の感じ方は人それぞれ。治らないものならば、様々な工夫で一つひとつ乗り越える方法を探していきましょう。