【前回の記事を読む】「薄氷を踏む思いで歩く」点字ブロック…視覚障害者のことをもっと知ろう
視覚障害について
視覚障害者でも、点字が読める人は1割程度ですが、あんなに小さな点の位置の違いがわかるなんて凄いですね。私が麻雀牌でわかるのは白牌だけだと言ったら、アリコさんには通じませんでした。
この時のフェイスブックライブでは、『ヤンキー君と白杖ガール』という漫画やボイスコミックをご紹介しました。ボイスコミックというのは、コマ割りの漫画を声優さんが解説付きで物語を進めるものです。この時はユーチューブの音声と画像をお見せしました。胸キュンな物語で、脳性麻痺の読書好きな友人にも紹介をしたら、頁をめくる必要がなくて助かると言いました。ヘルパーさんに頁めくりを頼むのは気が引けるのだそうです。ボイスコミックを便利に感じるのは、視覚障害者だけではないようです。
この日はアリコさんに、私が初めて視覚障害者をガイドした時の話をしました。随分前ですが、電車を乗り換える時に、白杖を持った背の高い男性が困った様子で連絡通路に立っていました。視覚障害者のガイド方法は、UDアドバイザー養成講座で習っただけで不安でしたが、素通りもできずに「どうされましたか? どちら方面へ行かれますか?」とお聞きしました。こんな体験は、ある日突然やって来るものです。
その人は、「いつも通る駅だけれど、方向がわからなくなりました」と言いました。偶然乗り換える電車が私と同じだったので、「ご一緒しましょう」とお声をかけてから、一所懸命テキストの絵を頭に思い浮かべました。
背の高いお相手の場合は肩に手を置いてもらう、ガイドをする人のどちらの肩を持つのかは、利き手や持ち物で決まるんだったなと思い出しながら、ご案内しました。そして私の右肩に手を置いてもらったものの、薄いTシャツ1枚でドキドキが伝わるのではと思うほど緊張し、ロボットみたいにカキンコキンと歩いたという昔話をしました。
「順子さんにもそんな時があってんね」とアリコさんは笑いました。
その日の電車はガラ空きだったので、「座ってください」と声をかけましたが、その人は「座りません」と言いました。ガイドをするのが初体験だった当時の私は、その言葉は遠慮だろうと勝手に決めつけ、少々強引に座らせてしまいました。十数年後に、この席をお勧めする行為がいかにありがた迷惑なのかを、別の視覚障害者が教えてくれました。
視覚障害者は両手が使えるようにリュックを使っている人が多く、座席に座るためにリュックを外すのが面倒で、ドア近くの手すりにつかまっている方が、よほど簡単に電車から降りられるという事でした。そこまで先に学んでいれば、無理に座らせはしなかったのに、という思いをライブで話しました。
アリコさんには、初めてガイドをする時は、「初めてで慣れていないんです」と正直に言えば気が楽になるよと付け加えました。