2030年代のシンギュラリティ(AIが人類の知能を超える技術的特異点)の到来まで情報ネットワークは高度化を続け、AIやIoTはビッグデータを追い風に進化していくことになるだろう。

そして物流はその恩恵を最も大きく受けることになるはずである。たとえばここにきて研究・開発が進むロボティクス(ロボット工学)分野でも運搬や庫内作業など、実用化の先鞭をつけているのは物流・ロジスティクス領域である。AIを搭載して自律型飛行を行うロジスティクスの用途としても最も注目を集めているのがドローンだろう。

すでに離島、山間部などで日本郵便、ヤマト運輸、佐川急便、楽天などが実用化、実証実験を行っている。完全実用化に向けて秒読み段階に入ったともいえよう。

さらにいえば、サプライチェーンの司令塔ともいえる「物流センター」もAIによる在庫管理、入出荷管理、作業者管理などを視野に入れた無人化で「考える物流センター」への道を歩み始めている。

もちろん、物流革命により、私たちの生活も一変する。

宅配便はトラックドライバーではなく、ロボットが届けてくれるか、タワーマンションのベランダあたりにロジスティクスドローンが持ってきてくれることが当たり前になるだろう。巨大な「考える物流センター」は自ら、サプライチェーンの最適化を考え、商品の品揃えや在庫計画まで精緻に練り上げてくれることになるだろう。

無論、ビジネスパーソンのライフスタイルも大きく変わることになる。パンデミックが終息しても、コロナ禍以前のビジネススタイルにはもはや戻れない可能性も指摘されている。広範かつ緻密な物流ネットワークの構築とその恩恵なしには、アフターコロナ時代の社会生活もビジネスも考えられないということになるかもしれない。

たとえば、コロナ禍以前は営業スタッフがサンプルや商品を持ち込んで対面でプレゼンしていたが、ウィズコロナ以降は営業スタッフはオンライン会議システムでプレゼンを行い、サンプルや商品は宅配便などで取引先に別送している。いうならばコロナ禍以前は「人・モノ一致」(人がモノを直接運ぶ)だったが、コロナ禍以降は「人・モノ分離」(人どうしはオンライン、モノは別送)というしくみである。

あたかもインターネットがグローバルスケールで構築され、私たちの生活の完全なる一部となったように、緻密かつ広範な物流ネットワークなくしては社会生活が成立しないようになる可能性がきわめて高いのである。