【前回の記事を読む】日本経済再生の大きなカギは「物流・商流デジタルプラットフォームをしっかり構築すること」
第1章 情報革命からシン・物流革命へ
IT革命から「シン・物流革命」へ
スマート物流サービスの推進により物流・商流のデジタルプラットフォームが今後、大きく強化されていくことになる。実際、スマート物流サービスの推進などが起爆剤となり、物流革命が進み、スマート社会のインフラ構築や、サプライチェーン全体での可視化や最適化が進められていくのは間違いない。1980年代にエリヤフ・ゴールドラット(故人)の制約理論※1などをベースにサプライチェーンマネジメント(SCM)の体系化が進んだが、全体最適という考え方はなかなか浸透しなかった。
「たしかにSCMの説くところの情報共有や全体最適という考え方は評価できる。しかし、実際、そんなことができるのだろうか。たとえば、需要予測の情報共有など、絵に描いた餅にしか思えない」といった具合であった。
だが、いまになってみると、情報通信システムの超高度化の後押しもあり、需要予測に関する情報共有やサプライチェーンの全体最適などは、実現可能なゴールと認識されている。物流はそれほどまでに情報革命の恩恵を受けて大きく変わってきた。
さらにいえばコロナ禍以降、物流は生活の基盤としての位置付けを完全に社会に認知させてしまった。ヤマト運輸や佐川急便の宅配便なくしてはウィズコロナ時代を乗り切ることはできなかったし、ウーバーイーツや出前館などのフードシェアリングデリバリービジネスは完全に食生活のインフラになってしまった。
けれども、物流が世の中でより強力なプレゼンス(存在感)を発揮するのは、むしろこれからかもしれない。
「物流革命」という言葉はSCMの登場以降、しばしば使われてきた。だが、ここにきて、これまで以上のスケールで物流は大きく変わろうとしている。いわば、「シン・物流革命」がこれから始まるといえよう。情報革命の一連の波の次に現れるさらなるパラダイムシフトとしてシン・物流革命が到来するのである。
5G、さらにその先に見える6Gなどから超高度情報システムが社会全体をスマート化していく流れはもはや停滞することはないだろう。ただし、それは革命というよりももはや社会にとって「想定内の変革」ととらえられるはずである。
※1:制約理論 イスラエルの物理学者であるエリヤフ・ゴールドラット(故人)が提唱した理で、改善を繰り返すことで全体最適を実現する。